最新記事
禅語

「人との出会い、仕事との出会い、モノとの出会い──」 仏教が伝える人生における本当に大切な出会いとは?

2024年11月11日(月)17時55分
枡野 俊明 (曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー) *PRESIDENT Onlineからの転載

そのときだからこその良縁

「やりたい仕事が巡ってきたのに、ちょっと規模が大きすぎて尻込みしてしまった」
「いい物件があったのに、数日迷っているうちに売れてしまった」

このような経験は、誰にでもあると思います。


「縁」とは、ときと場所、いろいろな巡りあいがあります。良縁にもなれば、悪縁になる場合もあります。

これはチャンスだと思えば良縁です。

「ためらう者にチャンスなし」という格言もあるように、チャンスは一度のがしてしまうと次はなかなか巡ってきません。そのときだからこその良縁なのです。

それが「ときの縁」です。

チャンスが巡ってきたら、どうすればいいか──。

「どうだ、チャレンジしてみないか」と推してもらったときに、躊躇なく、他の何をおいてでも挑戦する。そして、それだけに集中して取り組むことです。

もし、「ときの縁」ではないと感じたなら断ります。いやいや無理をして進めてもうまくいきません。それはご縁がなかったということです。

「すばらしい縁なんて、めったに巡ってこない」と嘆いてはいけません。「ときの縁」を呼び込むために常に下地をつくっておくのです。

前述のとおり、すべては巡り巡ってつながりあっているのですから、いつもそのことを考え、いつチャンスが巡ってきてもいいように努力をつづけることです。そんな人に仏さまはご縁を運んでくださるのです。

「善因善果(ぜんいんぜんか)、悪因悪果(あくいんあっか)、自因自果(じいんじか)」という言葉があります。よい行いをしていればよい報いが得られ、悪い行いには悪い結果が起こる、そして自らの行いは自分に返ってくる、という意味です。因縁とはそういうもの。胆に銘じたい言葉です。

スピードを気にするのは、常に誰かと比べているから

「同じ土俵」にのらない──人は人、自分は自分

同僚のほうが仕事が早い。同期のアイツが自分より先に主任になった──。

現代はスピード偏重社会ですから、仕事でも出世でも、人より後れを取ると不安を感じる方も多いと思います。

作業や出世のスピードだけでなく、判断や動作にもスピードが求められているようです。また、自分にちょっとゆずる気持ちがあると、相手にどんどん先を越されるということもあるでしょう。

だから、隣席の同僚などの様子をのぞき見して、相手のほうがサクサクと仕事を進めていようものなら焦ってしまいます。

作業のやり方には個人差がありますから、極端に作業が遅いならともかく、多少の差は気にすることはありません。それはわかっていても、後れを取っていれば浮き足立ってしまいます。

スピードを気にするのは、常に誰かと比べているからです。比較する相手がいなければ焦ることもありません。脇目をふらず自分のペースで、自分の納得のいくやり方で進めればいいのです。

上司から「キミはみんなと違ってじっくりと仕事をこなすタイプだねぇ」などと嫌みをいわれても、「そうなんですよ。量より質のタイプなんです。はっはっは~」と笑って、サラッとかわしておけばいいのです。

同じ時間でやれる量は少なくても、丁寧にミスなく仕上げていれば、かならず評価されます。早く仕上げてミスが多かったり不良品があれば、やり直しにかえって時間がかかります。

さらに、丁寧なだけでなく、そこに他の人にはできない自分なりの工夫を加えることができれば、さらに評価は上がります。

要は、「スピード」という同じ土俵にのらなければいいのです。

あなたは、自分自身の「質」の土俵で、黙々と仕事をこなせばいいのです。あなたの個性に気づいてくれる人はかならずいます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中