米大統領選前夜、警戒続く日本株...「急落なら買い」銘柄探る動き
優良銘柄の仕込みどころに
8月の急落時には、全体相場の弱い地合いに巻き込まれた人気銘柄のリバウンド力の高さが目立った。当時は米景気の後退や日銀のタカ派傾斜への懸念が強かった。足元では米景気懸念が和らいでいるなど、外部環境が異なるため単純比較は難しいが「銘柄別の復元力を見極める上では参考になる」(ニッセイ基礎研の井出氏)という。
リバウンド力が最も高かったのは、生成AIの普及に伴う光通信や電力需要の高まりを見越して春先から人気化した電線御三家の一角のフジクラ。8月上旬の安値から9月までに株価は2倍になり、足元ではさらに上値を伸ばしている。
フジクラのPERは急落前に16倍台だったが、足元では約25倍に上昇。割高感は出てきているが「テーマ性があるため、適温相場の間は人気が続きそうだ」(三木証券の北沢氏)とみられている。住友電気工業のリバウンドも33%と高い。
IHI(58%上昇)や三菱重工業の(同46%)といった、防衛関連のリバウンド力も大きかった。政府が27年度までの5年間の防衛費約43兆円の方針を打ち出して以降、人気が高まっている。三菱重のPERは約30倍と割高にも見えるが「防衛予算の水準が変わる中で受注をとっていくとなれば、過去のPERとの比較で割高とは必ずしもいえない」と、内藤証券の田部井美彦投資調査部長はみている。
知財(IP)関連も有望と田部井氏は指摘する。キャラクターでは、サンリオが急落後に37%、アニメに力を入れるKADOKAWAが27%と大きめのリバウンドを示した。セガサミーホールディングス(同37%)、カプコン(同36%)といったゲーム分野の反発力も大きかった。とりわけアニメ分野の伸びしろがありそうだという。「ゲームソフトは海外売り上げが国内の4倍程度。現行は内外比率が半々のアニメも、同程度の比率に成長する余地があるのではないか」と田部井氏はみている。
主力事業の転換に成功した銘柄への人気も根強い。フイルムからヘルスケアへと軸足を移した富士フイルムホールディングスが43%、同様に総合電機からデジタル化(DX)企業に転換した日立製作所が33%の上昇と、株価の復元力の高さを示した。
東証33業種では、非鉄金属(34%)、保険(31%)、石油・石炭製品(29%)、海運(29%)、証券(27%)が、それぞれ急落後の上昇率の上位だった。
もっとも、イベント通過に伴って調整局面となる場合でも、その深さの見極めは容易ではない。ニッセイ基礎研の井出氏は「一度に多くの資金を傾けるのではなく、買い下がっていく手法が有効だろう」と話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)