最新記事
日本市場

米大統領選前夜、警戒続く日本株...「急落なら買い」銘柄探る動き

2024年11月5日(火)15時16分

優良銘柄の仕込みどころに

8月の急落時には、全体相場の弱い地合いに巻き込まれた人気銘柄のリバウンド力の高さが目立った。当時は米景気の後退や日銀のタカ派傾斜への懸念が強かった。足元では米景気懸念が和らいでいるなど、外部環境が異なるため単純比較は難しいが「銘柄別の復元力を見極める上では参考になる」(ニッセイ基礎研の井出氏)という。


 

リバウンド力が最も高かったのは、生成AIの普及に伴う光通信や電力需要の高まりを見越して春先から人気化した電線御三家の一角のフジクラ。8月上旬の安値から9月までに株価は2倍になり、足元ではさらに上値を伸ばしている。

フジクラのPERは急落前に16倍台だったが、足元では約25倍に上昇。割高感は出てきているが「テーマ性があるため、適温相場の間は人気が続きそうだ」(三木証券の北沢氏)とみられている。住友電気工業のリバウンドも33%と高い。

IHI(58%上昇)や三菱重工業の(同46%)といった、防衛関連のリバウンド力も大きかった。政府が27年度までの5年間の防衛費約43兆円の方針を打ち出して以降、人気が高まっている。三菱重のPERは約30倍と割高にも見えるが「防衛予算の水準が変わる中で受注をとっていくとなれば、過去のPERとの比較で割高とは必ずしもいえない」と、内藤証券の田部井美彦投資調査部長はみている。

知財(IP)関連も有望と田部井氏は指摘する。キャラクターでは、サンリオが急落後に37%、アニメに力を入れるKADOKAWAが27%と大きめのリバウンドを示した。セガサミーホールディングス(同37%)、カプコン(同36%)といったゲーム分野の反発力も大きかった。とりわけアニメ分野の伸びしろがありそうだという。「ゲームソフトは海外売り上げが国内の4倍程度。現行は内外比率が半々のアニメも、同程度の比率に成長する余地があるのではないか」と田部井氏はみている。

主力事業の転換に成功した銘柄への人気も根強い。フイルムからヘルスケアへと軸足を移した富士フイルムホールディングスが43%、同様に総合電機からデジタル化(DX)企業に転換した日立製作所が33%の上昇と、株価の復元力の高さを示した。

東証33業種では、非鉄金属(34%)、保険(31%)、石油・石炭製品(29%)、海運(29%)、証券(27%)が、それぞれ急落後の上昇率の上位だった。

もっとも、イベント通過に伴って調整局面となる場合でも、その深さの見極めは容易ではない。ニッセイ基礎研の井出氏は「一度に多くの資金を傾けるのではなく、買い下がっていく手法が有効だろう」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中