リーダーの「自己防衛」が、チームの崩壊を招くリスクに...いま職場でチームレジリエンスが必須な理由
安斎勇樹さん(以下、安斎) これまで多くの経営層やミドルマネジャー向けに組織開発や研修を担当させていただきましたが、リーダー職に就く人は、レジリエンスが強く、そう簡単には心が折れない方が多い。しかし、責任の重さと孤独さゆえに、事業が低迷すると、どんなに人格者でも思考がダークサイドに落ちていって、うまくいかない理由をメンバーや顧客など「他人」のせいにしてしまうことがある。これって実は、リーダーが極度のストレスから自己防衛するための「個人のレジリエンス」の裏返しなんですよ。
そこで気づいたのは、リーダーの心が折れないことと同じくらい、組織が崩壊しないことも大事ということです。レジリエンスの概念を、個人からチームや組織に拡張する必要性を感じていたところ、海外ではチームのレジリエンスに関する研究論文が少しずつ出てきていました。ところが、論文の数は50本程度とまだまだ少なく、日本語の情報はほとんどない。そこでまずは、チームレジリエンスの概念を日本語の書籍で提示しようと、池田さんと共著を書くに至りました。
──チームレジリエンスが現代の職場において必須である背景について教えてください。
池田 いまは不確実性の時代といわれますが、その本質は「未来のわからなさ」と「現在のわからなさ」にあります。解決すべき問題の輪郭がつかめず、焦りや閉塞感が募っていく。
人間には、「仕事量が多い」といった明確なストレスよりも、「これからどうなるかわからない」という予測不可能なストレスのほうを強く感じる特性があります。現在の職場では、いきなり顧客から理不尽なクレームがくる、エースが離脱するといった、後者のストレスが急増しているのです。もはやリーダー一人で抱えこめるレベルではなく、チームとして困難を乗り越える力がますます重要になっていると捉えています。
途方もない「モグラ叩き」に、チームとしてどう対処するか?
──レジリエンスは成長も内包すると書かれていました。なぜ、困難に立ち向かう過程が成長の糧になるのでしょうか。
池田 レジリエンスの発揮では、3つのステップを経ていきます。ステップ1は「課題を定めて対処する」、ステップ2は「困難から学ぶ」、そしてステップ3は「被害を最小化する」。これらをくり返すことで、困難を避ける対策を打てる。さらには、メンバー同士の対話を通じて、互いの価値観や最適な業務アサインがわかり、チームとして成長していけるのです。