最新記事
BOOKS

「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】

2024年7月25日(木)07時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

他人に命令されたくなければ、自分に命令されたらよい

ただ、ここが大人になってからの〈勉強〉の、もっともおもしろいところですが、大人の〈勉強〉は、ほかの大人や世間から強制されたものではない。強制するのは、自分なんです。自分が自分に命じている。おまえは変わる必要がある。おまえにはまだ伸びしろがある。まだいける。成長途中だ。おれは、こんなもんじゃない。

そうやって、自分が自分に命じているからこそ、いい大人になってまで、小難しい本を、ときには外国語で、辞書を引き引き、数学だったらノートに数式や図を書き写して、定規やコンパスも使って、〈勉強〉している。他者が命令するのではない。自分が自分に命令する。


Dem wird befohlen, der sich nicht selber gehorchen kann.
自己に服従しえざる者は他者によって命令せらるる
(ニーチェ『ツァラトストラかく語りき』)

わたしは、学校と名のつくものは、どれもこれも大嫌いでした。小学校も中学校も、思い出すとおなかが痛くなるくらい嫌いだった。勉強が嫌い、だったわけではどうやらない。命令されていたからです。他者に命令されるのが、わたしはほとほと嫌いなんです。

他者に命令されるのが嫌いな人は、自分で自分に命令するしかない。ニーチェの書いたとおりです。

〈勉強〉している人がかっこいいのは変わり続けるから

そして、〈勉強〉している人は、かっこいいとも思う。ライターだけではありません。ミュージシャンだって画家だって、アスリートも、人の気持ちをうつことができるのは、〈勉強〉している人です。自分を、変えている人です。転がる石。

史上最長寿のロックバンド、ローリング・ストーンズは文字通りの転がる石です。黒人音楽のR&B好きでキュートなルックスの五人組が、女の子にキャーキャー言われてデビューして、変化しなかったらそこで終わります。そんなバンドは掃いて捨てるほどある。今後も出る。

彼らはそこで変わった。ブルースなどアメリカ黒人音楽を、勉強し直した。カントリー/ウエスタンの白人伝統音楽も探究した。七〇年代初頭の奇跡の名作群は、そうした彼らの研究によってできあがったものです。

どんなに売れても、成功しても、〈勉強〉をやめなかった。レゲエを学んだ。いまはディスコがはやってる? じゃあディスコミュージックだ。若いやつはパンクだと? パンクのビートってどんなだ。どんどん吸収して、自分たちを変えていった。二〇二三年に出た新作は、配信音楽を深く研究しています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領、米と直接交渉可能と示唆 ミサイル計画

ビジネス

ECB当局者、追加利下げに論拠 伝達方法巡り見解割

ワールド

ロシア軍、150万人規模へ 大統領令で18万人増強

ワールド

ロシア「火遊びの結果」、トランプ氏銃撃容疑者がウク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優雅でドラマチックな瞬間に注目
  • 2
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将来の「和解は考えられない」と伝記作家が断言
  • 3
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライナ軍MANPADSの餌食になる瞬間の映像を公開
  • 4
    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…
  • 5
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 6
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 7
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 8
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 9
    バルト三国で、急速に強まるロシアの「侵攻」への警…
  • 10
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 3
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 4
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 5
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 6
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 7
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 8
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 9
    キャサリン妃、化学療法終了も「まだ完全復帰はない…
  • 10
    33店舗が閉店、100店舗を割るヨーカドーの真相...い…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 6
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中