米小型株が急騰、循環物色で「ウォール街の寵児」に...「暗殺未遂事件」が転機
18日、米小型株に待望の瞬間が訪れている。利下げ観測の高まりに加え、11月の大統領選で国内中小企業に有利な政策を掲げるトランプ前大統領が勝利する確率が高まったとの見方が背景だ。ニューヨーク証券取引所で2019年撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)
米小型株に待望の瞬間が訪れている。利下げ観測の高まりに加え、11月の大統領選で国内中小企業に有利な政策を掲げるトランプ前大統領が勝利する確率が高まったとの見方が背景だ。
小型株で構成するラッセル2000指数は過去5日間で11.5%以上急騰、2020年4月以来の大幅高を記録した。
一方、ハイテク株や成長株は値動きが不安定になっており、今年急騰したこうした銘柄から小型株への循環物色が起きているとの見方が強まっている。
ハイテク株が多いナスダック100指数は先週から3%下落しており、17日には1日としては今年最大の下げを演じた。
小型株を専門とするノース・スター・インベストメント・マネジメントのエリック・クビー最高投資責任者は「テーマが変わったと考えていている。過去1週間の急騰は始まりに過ぎず、今後は非常に長い期間、複数年にわたって小型株が大幅に巻き返す可能性があると期待している」と述べた。
ラッセル2000指数は過去1週間の急騰にもかかわらず、年初来上昇率が10.5%にとどまっている。S&P500指数は17%、ナスダック100指数は約18%だ
CPIと暗殺未遂事件
風向きが変わったのは先週。消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことを受けてFRBが数カ月以内に利下げに踏み切るとの観測が強まった。借り入れコストの高止まりに苦しむ中小企業が恩恵を受ける可能性がある。
ジェニソン・アソシエイツの中小型株担当責任者ジェイソン・スウィアテック氏は、金利上昇は「小型株の逆風」になっており「利下げサイクルに入れば、そうした圧力が幾分緩和される」と述べた。
小型株の上昇にさらに弾みをつけたのが、週末に起きたトランプ氏の暗殺未遂事件だ。関税引き上げや減税など中小企業に有利な政策を掲げるトランプ氏が大統領選で勝利するとの見方が広がったとみられる。
先週のCPI発表後、急伸している小型株にはバイオテクノロジーのカリブー・バイオサイエンシズ(55%上昇)、住宅建設のホブナニアン・エンタープライジズ(30%余上昇)、保険のヒッポ・ホールディングス(29%余上昇)などが挙げられる。
ハイテク株はバリュエーションの高さが懸念され、20年前のドットコムバブルと比較されることもあり、資金流出が続けば小型株の上昇ペースが加速する可能性がある。
LSEGのデータによると、ラッセル2000指数の直近の時価総額は2兆7000億ドル。マイクロソフト、アップル、エヌビディア各社の時価総額(いずれも2兆9000億ドル以上)を下回っている。
チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「資金が大型株から流出し、新たな投資先を探しているため、小型株を動かすのにそれほど時間はかからない」と述べた。
歴史を振り返ると、このところの小型株急騰は小型株が目先好調に推移する前兆かもしれない。ラッセル2000指数は過去1週間、5営業日連続で1%以上値上がりしたが、ビスポーク・インベストメント・グループによると、これは過去4回しか起きておらず、同指数はその後1カ月で平均5.9%値上がりした。