最新記事
米経済

米小型株が急騰、循環物色で「ウォール街の寵児」に...「暗殺未遂事件」が転機

2024年7月18日(木)15時27分
ニューヨーク証券取引所

18日、米小型株に待望の瞬間が訪れている。利下げ観測の高まりに加え、11月の大統領選で国内中小企業に有利な政策を掲げるトランプ前大統領が勝利する確率が高まったとの見方が背景だ。ニューヨーク証券取引所で2019年撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

米小型株に待望の瞬間が訪れている。利下げ観測の高まりに加え、11月の大統領選で国内中小企業に有利な政策を掲げるトランプ前大統領が勝利する確率が高まったとの見方が背景だ。

小型株で構成するラッセル2000指数は過去5日間で11.5%以上急騰、2020年4月以来の大幅高を記録した。

一方、ハイテク株や成長株は値動きが不安定になっており、今年急騰したこうした銘柄から小型株への循環物色が起きているとの見方が強まっている。


 

ハイテク株が多いナスダック100指数は先週から3%下落しており、17日には1日としては今年最大の下げを演じた。

小型株を専門とするノース・スター・インベストメント・マネジメントのエリック・クビー最高投資責任者は「テーマが変わったと考えていている。過去1週間の急騰は始まりに過ぎず、今後は非常に長い期間、複数年にわたって小型株が大幅に巻き返す可能性があると期待している」と述べた。

ラッセル2000指数は過去1週間の急騰にもかかわらず、年初来上昇率が10.5%にとどまっている。S&P500指数は17%、ナスダック100指数は約18%だ

CPIと暗殺未遂事件

風向きが変わったのは先週。消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったことを受けてFRBが数カ月以内に利下げに踏み切るとの観測が強まった。借り入れコストの高止まりに苦しむ中小企業が恩恵を受ける可能性がある。

ジェニソン・アソシエイツの中小型株担当責任者ジェイソン・スウィアテック氏は、金利上昇は「小型株の逆風」になっており「利下げサイクルに入れば、そうした圧力が幾分緩和される」と述べた。

小型株の上昇にさらに弾みをつけたのが、週末に起きたトランプ氏の暗殺未遂事件だ。関税引き上げや減税など中小企業に有利な政策を掲げるトランプ氏が大統領選で勝利するとの見方が広がったとみられる。

先週のCPI発表後、急伸している小型株にはバイオテクノロジーのカリブー・バイオサイエンシズ(55%上昇)、住宅建設のホブナニアン・エンタープライジズ(30%余上昇)、保険のヒッポ・ホールディングス(29%余上昇)などが挙げられる。

ハイテク株はバリュエーションの高さが懸念され、20年前のドットコムバブルと比較されることもあり、資金流出が続けば小型株の上昇ペースが加速する可能性がある。

LSEGのデータによると、ラッセル2000指数の直近の時価総額は2兆7000億ドル。マイクロソフト、アップル、エヌビディア各社の時価総額(いずれも2兆9000億ドル以上)を下回っている。

チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「資金が大型株から流出し、新たな投資先を探しているため、小型株を動かすのにそれほど時間はかからない」と述べた。

歴史を振り返ると、このところの小型株急騰は小型株が目先好調に推移する前兆かもしれない。ラッセル2000指数は過去1週間、5営業日連続で1%以上値上がりしたが、ビスポーク・インベストメント・グループによると、これは過去4回しか起きておらず、同指数はその後1カ月で平均5.9%値上がりした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中