まじめに頑張る人ほど苦戦...「できる営業」は何が違う? 2万人調査で見えた「できない営業」の問題点
もちろんハイパフォーマンスな人もそれを意識していないわけではありません。ただ、ハイパフォーマーはそれ以外の武器のラインナップが広いんです。逆に目標未達の人たちは、まじめや誠実さ以外の武器が少ないことが調査を通して見えてきました。
営業の世界には、よく言われる「3つのアドバイス」があります。1つ目は「目標達成を意識しなさい」、2つ目は「大量行動をしなさい」、3つ目は「お客様と関係構築をしなさい」。
この中で、3つ目の「関係構築」がとりわけ難しいんですね。目標達成を意識することはできるし、大量行動もがんばればできる。でも、いくらがんばっても冷たいお客様っていますよね。また、新規のアポイント獲得のためにお電話しても、「まずは資料だけ送ってください」とかわされ続けていたら、関係構築も何もありません。それでも営業の指導では「たくさん行動をしていれば、関係構築できるよ」などとアドバイスされるわけです。
このアドバイスは、たしかに正論なのですが、あまりにアバウトすぎます。そこで私は「なぜお客様は営業と距離を縮めようとしないのか」ということを、しっかり解き明かしたいと思いました。そしてたどり着いたのが、『営業の科学』でも紹介している「購買者の仮面」です。
この「購買者の仮面」に気づけるかどうかが成果の明暗を分けるんです。成果の出ない人は、その仮面を被ったお客様に翻弄されている。逆に成果を上げている人は、仮面をうまく外してもらっているんです。
──「購買者の仮面」とは、具体的にはどのようなものでしょうか。
例えば、インサイドセールスの人が新規のアポイントを取ろうとするとき「今忙しいので」「ではいつなら空いていらっしゃいますか」というやりとりが発生します。それで「1カ月ぐらい忙しいかもしれない」と言われて1カ月後に電話してみると、「まだ忙しいです」と。また1カ月待って電話しても相手はまだ忙しい......。こういうやりとりを延々と繰り返すんですね。
成果を出す人は、本当に忙しいのか、それともその場しのぎではぐらかしているだけなのかを見極めます。たとえば、「今の時期はどういうことでお忙しくされているのですか?」と聞くと、相手のリアクションで大体わかりますよね。「ちょうど4月に社長が交代して組織体制も変わったので、これから結構バタバタすると思います」と返ってきたら、本当っぽいですよね。であれば、4月は忙しくても連休明けには落ち着いているかもしれないと、仮説を立てることができる。