最新記事
人間関係

なぜ「共感」は、生きづらさを生んでしまうのか...「伝える」よりはるかに強い「伝わる」の魔法の力

2024年6月27日(木)12時15分
flier編集部
共感が生きづらさを生む

Chay_Tee/Shutterstock

<レイチェル・カールソンの名著『センス・オブ・ワンダー』が今の時代に問いかけるものとは? 新訳に臨んだ独立研究者・森田真生さんに聞く>

時代に先駆けて世界の目を環境問題に向けさせた『沈黙の春』。その著者であるレイチェル・カーソンが遺した未完の作品が『センス・オブ・ワンダー』です。

独立研究者である森田真生さんは、この新訳とともに、「その続き」としてご自身の京都での自然の日々を綴りました。本書のページを開くと、約70年前のカーソンの肉声が聞こえてくるような新訳と、森田さんと息子さんたちが織りなす新たな世界観が広がります。森田さんはどんな思いで『センス・オブ・ワンダー』の訳に臨んだのでしょうか?
(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)


『センス・オブ・ワンダー』の翻訳を行った森田真生さん

『センス・オブ・ワンダー』の翻訳を行った森田真生さん(flier提供)

レイチェル・カーソンの「文章の続き」が自然と生まれた

──森田さんは『センス・オブ・ワンダー』の新訳とともに、「その続き」という形でレイチェルのテキストを書き継いでいます。森田さんと息子さんたちの京都での日々は心温まるものでした。翻訳と執筆のきっかけは何でしたか。

筑摩書房の編集者の方から翻訳の依頼をいただいたのは約3年半前。当時は『センス・オブ・ワンダー』を読んだことはありませんでした。ただ、ちょうどその頃は、拙著『僕たちはどう生きるか』のように、人間と人間以外のものとの生態学的な関係について考えるエッセイを書き始めた頃でした。人間と環境との関係を考えていく際に、レイチェル・カーソンは避けて通れない人物だと思っていました。

ただ、自然と人間の関係について、科学的な視点に根ざして書かれた文学という意味では、日本語で書かれた作品の豊かな系譜もあります。今回の本の「つづき」では実際、寺田寅彦や中谷宇吉郎、河合隼雄らの作品も参照しています。

そんな中で、カーソンのテキストが、なぜこれほどまで多くの人に愛され、長く読み継がれてきたのか。彼女が遺したテキストは僕たちの思考にどのような影響を与えているのか。一度ちゃんと考えてみたいという思いがありました。

「翻訳する」ことは、そのテキストを「よく読む」こと。カーソンの短いテキストを何年もかけてよく読むということは、僕にとって重要な挑戦になるだろうと。同時にもちろん、未完の作品を70年の時を超えて訳すのなら、何かしら新しいものをもたらすことができなければ自分が訳者になる意味はないとも思っていました。

センス・オブ・ワンダー
 著者:レイチェル・カーソン、森田真生
 翻訳:森田真生
 出版社:筑摩書房
 要約を読む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国「白酒」が西側進出へ、メーカーは販売

ワールド

アングル:300%インフレのアルゼンチン、「主食」

ビジネス

アングル:FRB当局者、インフレ鈍化に安堵 利下げ

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅安、PCEデータ受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:小池百合子の最終章
特集:小池百合子の最終章
2024年7月 2日号(6/25発売)

「大衆の敵」をつくり出し「ワンフレーズ」で局面を変える小池百合子の力の源泉と日和見政治の限界

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着たのか?...「お呼ばれドレス」5選
  • 3
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?
  • 4
    女性判事がナイトクラブで大暴れ! 胸が見えてもお構…
  • 5
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 6
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 7
    ロシアの人工衛星が軌道上で分解...多数の「宇宙ごみ…
  • 8
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 9
    あまりの激しさで上半身があらわになる女性も...スー…
  • 10
    「死刑囚だけど、会いたいから行ってるだけ」和歌山…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 3
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セクハラ疑惑で3年間資格停止に反論「恋人同士だった」
  • 4
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 5
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 6
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 7
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 8
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 9
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 10
    8人負傷のフィリピン兵、1人が「親指失う」けが...南…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 6
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 7
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 8
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 9
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 10
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中