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人工微生物「スマートセル」でサステナブルなものづくりを切り開け ! 「バイオものづくり」は温暖化対策と持続可能な経済成長の二兎を追う

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2024年6月3日(月)10時00分
文:和田龍彦、イラスト:大野文彰

水素細菌による革新的なものづくり技術の開発

脱炭素関連で注目のバイオものづくりのトピックがある。日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという「2050年カーボンニュートラル目標」を宣言している。目標達成のため、2兆円の「グリーンイノベーション基金」が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に創設され、2023年3月、同基金事業として「バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」プロジェクトが採択された。

このプロジェクトには、双日、電力中央研究所、Green Earth Institute、DIC、東レ、ダイセルが共同で提案した「水素細菌によるCO2とH2を原料とする革新的なものづくり技術の開発」が研究開発項目として含まれている。水素細菌という微生物は自然界に存在しており、CO2とH2を吸収する特徴を持っている。この微生物を基にスマートセルを生み出すことで、CO2とH2を使ったプラスチック、インクや塗料、繊維、化粧品など、身の回りのさまざまな用途に使われるものの原料を生産することができると期待されている。

このように、化石燃料に依存してきた工業分野では、スマートセルを活用することで、サステナブルなものづくりへの道が開けることとなるだろう。

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スマートセルを製造プロセスの中に組み込んだ産業群を「スマートセルインダストリー」と呼ぶ。スマートセルを用いて製造される高機能物質は幅広い領域で活用することができ、バイオテクノロジーを基盤とした経済圏が生まれる。

医薬品や化粧品に飲食物、建築資材や樹脂材料、燃料など、幅広い分野においてバイオものづくりが開拓する新たな産業領域、およびそれに伴う経済活動を「バイオエコノミー」と呼ぶ。この概念を提唱した経済協力開発機構(OECD)は、バイオエコノミーの世界市場について、2030年にはOECD加盟国の全GDPの2.7%、約200兆円まで成長すると試算している。

産業の競争力の強化のみならず、地球環境課題を解決する手段としても期待されている、バイオものづくり。活用が見込まれる産業が幅広いだけに、分野を横断して世の中のニーズを開拓し、そこに関わる人と人をつなぐ総合商社の果たし得る役割は非常に大きいと言える。



幅広いテーマで現代に生きるすべての探求者に新たな気づきを届けるメディア「caravan」では、関連記事『元ラグビー日本代表主将・廣瀬俊朗さんと考える「バイオものづくり」がひらく未来』も掲載中。

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