最新記事
キャリア

ハーバード「キャリア相談室」本が、日本で10年読み継がれている「意外な理由」

2024年6月5日(水)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
大学教授

写真はイメージです LightField Studios-shutterstock

<教え子でもない成功した大人たちが、その研究室を訪れ、涙を流す......。元ゴールドマン・サックス副会長のハーバード教授が教える、人生戦略のロードマップ>

ビジネス書の世界にも、流行り廃りがある。「○○の科学」系の本が書店にあふれた時代もあれば、「スタンフォード式」「ハーバード流」などと大学名を冠した書名がトレンドになった時期もあった。

そんな中でも、内容が高く評価され、一時の流行りを超えて、読み継がれていく本がある。

今からちょうど10年前、2014年7月に発売された『ハーバードの自分を知る技術――悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ』(CCCメディアハウス)もそんな1冊だ。このたび13刷となり、定番のロングセラーである。

著者は、ロバート・スティーヴン・カプラン。ゴールドマン・サックスで副会長まで務め上げたのち、ハーバード・ビジネススクールの教授に転じた人物だ。

カプラン教授は、リンダ・グラットンやクレイトン・クリステンセン、マイケル・ポーターのようなビッグネームではないし、ビジネススクールの教授だが経営学の本ですらない。

ではなぜ、この本は長きにわたって、日本で支持され続けているのか。

世界のトップ大学の名が興味を引くのは、その前提に「エリートは自分たちとは違う」という認識があるからだろう。単に優秀なだけでなく、目標に向かって突き進む彼らから成功へのヒントを得たいと思うからこそ、その実像を垣間見たいという気になる。
『ハーバードの自分を知る技術』
では一体、彼らの実像はどんなものかと言えば、実は、彼らエリートもまた多くの悩みを抱えている。しかもそれは、「自分が何をやりたいか分からない」「何のために仕事をするのか分からない」といった、よくある(だが切実な)悩みだ。

そんな悩みが、この『ハーバードの自分を知る技術』ではいくつも吐露されている。世界のエリートと呼ばれる人々が、いかに自分の人生に迷い、悩み、進むべき道を見失って途方に暮れていることか。

そういった意味で、他の多くの「エリート本」とは一線を画す内容だ。そしてもちろん、単に「エリートの悩める姿」を垣間見られる本ではなく、読者を導いてくれる最良のガイドのような本であるらしい。

「人生の指針として読んで損はない本」「最近読んだ本の中では突出してよかった」「この本を読んで、一週間、自分について考えた」......アマゾンを見ると、就活生から社会人まで、多くの日本の読者から賛辞が寄せられている。

カウンセラーでもないのに、教え子でもない人がやって来る

ある大学院生は、複数の金融機関から正社員としての内定をもらったものの、どれもピンと来ないと悩んでいる。もしお金を気にしなくていいなら何をしたいかと聞かれて、彼は「どの仕事も受けない」と即答した。音楽が大好きだから、レコード会社か音楽業界の仕事を探す、と。

ある会社の営業部長は、順調にキャリアを築き、幸せな家庭に恵まれて、貯金も十分にある。にもかかわらず、深刻な悩みを抱えている。それは「自分に違和感を覚えている」ということ。達成感を得られず、満足感もない。そして、そのことを誰にも相談できずにいる――。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アメリカン航空、今年の業績見通しを撤回 関税などで

ビジネス

日産の前期、最大の最終赤字7500億円で無配転落 

ビジネス

FRBの独立性強化に期待=共和党の下院作業部会トッ

ビジネス

現代自、関税対策チーム設置 メキシコ生産の一部を米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「iPhone利用者」の割合が高い国…
  • 10
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中