最新記事
キャリア

ハーバード「キャリア相談室」本が、日本で10年読み継がれている「意外な理由」

2024年6月5日(水)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

彼らがようやくその心の内をさらけ出したのは、ハーバード・ビジネススクールの研究室でのことだった。研究室の主であるカプラン教授は、じっくりと彼らの話に耳を傾け、どこに問題があるのか、どうやって解決していくのかを本人と一緒に探っていく。

だがカプラン教授はカウンセラーでもなければ、相談に来た人たちも教授の教え子というわけでもない。上の営業部長は、共通の友人から「相談に乗ってやってほしい」と頼まれたことが話を聞いたきっかけだという。

教授の専門は経営実務で、ゴールドマン・サックスに勤めていた22年間を通じて、さまざまな管理職を歴任した。当時から、会社の若手・中堅だけでなく同僚やクライアントなど数多くの人にコーチングを行ってきた。その後、ハーバード大学のMBAプログラムではリーダーシップ講座を担当している。

そんなカプラン教授の研究室には、学生だけでなく社会人までもが次々と訪れ、さながら「キャリア相談室」のように、キャリアや人生について相談していくらしい。

その経歴から、カプラン教授のもとを訪れるのはアメリカのエリート層、つまりは、世界のエリートたちだ。どんなときでも自信満々に見える彼らだが、教授の研究室では、時には涙を流しながら悩みを打ち明けるのだという。

他人の基準を鵜呑みにすると、心は満たされない

エリートに限らず多くの人が人生に行き詰まり、「自分は何をしたらいいか分からない」と悩む要因のひとつは、周囲のアドバイスに耳を傾けて、その期待に応えようとするからだと教授は指摘する。

周囲の目を気にしがちな日本人ならいざ知らず、アメリカ人の、しかもエリートでもそうなのか......と驚く人は多いだろう。だがカプラン教授によれば、エリートというのは特にそうした傾向が強い人々らしく、だからこそ、ある時点で唐突に壁にぶつかってしまう。

だが、「成功する」あるいは「夢を叶える」ためには、そもそも自分にとって何が「成功」であり、どうなることが「夢」なのかを定義しなくてはならない。他人が「成功」だと言うものを鵜呑みにすると、たとえそれを手に入れたとしても、心は全く満たされないまま人生が終わってしまう。

では、どうすればいいのか? 本書の原題は「What You're Really Meant to Do(あなたが生まれもった使命)」という。「使命」とは少々大げさに思えるかもしれないが、言い換えれば「自分を知る」ということだ。

その第一歩として本書では、自分の長所と短所を知るところから始める。つまり、「何ができて、何ができないか」だ。というのも、意外にも、自分の長所と短所を理解していない人は多いらしい。なぜなら、それを掘り下げて考えたことがないからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは153円後半、9カ月ぶり高値圏で売

ワールド

英で年金引き出し増加、今月の予算案発表で非課税枠縮

ワールド

COP30控え首脳級会合、米不在で「真の多国間協議

ワールド

アングル:メキシコ大統領、酔った男に抱きつかれる被
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中