最新記事
ビジネス

ジャニーズ問題は「氷山の一角」...いまだ日本の会社内で見て見ぬふりされる「時代遅れの価値観」はこんなに

THE POWER BALANCE SHIFT

2024年1月11日(木)19時28分
ジェヨブ・S・クァック(韓国在住ジャーナリスト)

240116P38_BTJ_03.jpg

性的少数者を自任する人は人口の10%程度に増えているが、職場でカミングアウトする人は依然として少ない YOSHIO TSUNODA/AFLO

昨年4月には、性的少数者への偏見・差別解消を目指す「東京レインボープライド」のイベントに、大手企業の幹部を含む20万人以上が参加した。10月に東京で開かれた「LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)」のイベントには、国会議員や東京都の小池百合子知事、俳優の鈴木亮平といった面々からメッセージが寄せられた。

同性婚の法制化に賛同する企業を可視化することを目指すキャンペーン「ビジネス・フォー・マリッジ・イクオリティ」(LLANを含む3つの団体が共同で運営)によると、昨年11月の時点で、同性婚の権利の法制化に賛同すると表明した企業・団体は456に達している。

仕事への熱意は世界最低?

東京で働く千葉県出身の20代、高橋洋輝は、このような潮流の恩恵を受けているといえるだろう。外資系の人材紹介会社ロバート・ウォルターズに勤めている高橋は、同性愛者であることを公表しているイギリス人男性の上司、そしてアライ(性的少数者の理解者・支援者)である同僚たちと一緒に働いた後に、カミングアウトした。

「この職場では最初から、同性愛者の男性であることに不安を感じたことがない。ずっと心理的安全性があった」と、高橋は言う。

しかし、同性愛者への偏見が日本社会から消えたわけではない。性的少数者のほとんどは、逆風を恐れてカミングアウトしていない。日本企業で働く人は、特にその傾向が強い。

宮崎県出身の20代のH(仮名)がある友人にカミングアウトしたときには、こんな言葉が戻ってきたという。「へー。見た目は普通なのに」。Hはこれまで2人の同僚に同性愛者だと打ち明けたが、今後はもう職場でカミングアウトするつもりはない。

DEIの専門家によれば、多くの企業が毎年ダイバーシティ研修を実施しているが、自分の経験を自発的に語る従業員はほぼいない。このため、性的少数者を自任する人が人口の10%程度に達し、企業が積極的な取り組みをしても、依然としてマイナーな問題と見なされている。

これに関しては経営幹部のサポートが決定的に重要だと、法律事務所フレッシュフィールズブルックハウスデリンガーの中尾雄史・東京オフィス代表パートナーは語る。「同性愛者であることがキャリアを傷つける可能性が0.1%でもあれば、誰もカミングアウトしたがらない」

中尾はLLANの理事を務めるが、勤務する事務所のパートナー(共同経営者)になるまでは、自分の性的指向を職場で明かさなかったと言う。「全ての上司と同僚が私のことを、ストレート(異性愛者)の弁護士と同じように優秀な仲間だと認めてくれるまで待ちたかった」。

ついに中尾がカミングアウトすると、同様の行動を起こす弁護士が続いた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米フォード、国内で値下げを計画、潤沢な在庫を活用

ビジネス

日本のインフレ率は2%で持続へ、成長リスクは下方に

ビジネス

三菱商事、26年3月期に最大1兆円の自社株買い 年

ワールド

韓国、関税巡り米当局者との協議模索 企業に緊急支援
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中