最新記事
ビジネス

ジャニーズ問題は「氷山の一角」...いまだ日本の会社内で見て見ぬふりされる「時代遅れの価値観」はこんなに

THE POWER BALANCE SHIFT

2024年1月11日(木)19時28分
ジェヨブ・S・クァック(韓国在住ジャーナリスト)

アフターコロナの職場では、必要最低限の仕事しかしない「クワイエット・クイッティング(静かな退職)」が世界的なトレンドになったが、日本のように終身雇用が根強い文化圏では、仕事にやる気を感じない従業員は珍しい存在ではない。

米ギャラップが昨年6月にまとめた報告によると、日本人の仕事に対する熱意は世界最低レベルで、仕事に熱意や愛着を感じると答えた人はわずか5%だった。仕事への「積極的な不関与」を実践する人は25%にも達した。そうした勤務態度は組織にとってマイナスになる。

日本の従業員は、「自分には変えることのできない職場に捕らわれ、抜け出せないと感じている」と、ギャラップ東南アジア・日本地域ディレクターのカニカ・シンは指摘する(旧ジャニーズ事務所もそうした性質の職場だったのかもしれない)。

旧日本軍から続く悪しき伝統

同時に、日本の若者はこれまで以上に個人主義的になり、社会から孤立している。SNSのおかげで不満を吐き出したり、遠く離れた場所に共感し合える仲間を見つけたりすることはできるが、親の世代よりも選挙に投票したり、抗議デモに参加したりする意欲は乏しい。

内閣府が22年末に実施した「社会意識に関する世論調査」によると、地域とのつながりを重視する若者も大幅に減っている。18~29歳では、「地域での望ましい付き合い」のレベルは「挨拶をする程度」と答えた人が36.4%と最も多かった。

これに対して、40~50代つまりおおむね「昭和世代」では「地域の行事や会合に参加したり、困ったときに助け合う」レベルが望ましいという答えが最多だった。

見方を変えれば、これは企業が若者にとって社会との重要な接点になる可能性を示している。だが企業が改善するべき点は多い。

厚生労働省が20年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、パワハラやセクハラを経験した後、誰にも相談しなかった人は35%を超えた。また、勤務先に通報しても、「特に何もしてくれなかった」と答えた人はパワハラで47%に上った。

日本型組織に関する資料として一橋大学の小野が挙げるのが、太平洋戦争時の日本軍の敗因を分析した『失敗の本質』(中公文庫)だ。6人の学者からなる著者チームは、極めて均質で閉鎖的な軍上層部の決定が、日本軍という巨大組織を間違った方向に率いてしまったことを論じている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米下院、エプスタイン文書公開義務付け法案を可決

ビジネス

米失業保険継続受給件数、10月18日週に8月以来の

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中