最新記事
ビジネス

ジャニーズ問題は「氷山の一角」...いまだ日本の会社内で見て見ぬふりされる「時代遅れの価値観」はこんなに

THE POWER BALANCE SHIFT

2024年1月11日(木)19時28分
ジェヨブ・S・クァック(韓国在住ジャーナリスト)

若年層の雇用見通しは明るいが

昭和の「サラリーマン」は愛社精神に燃え「24時間戦う」覚悟だったが、今の20代、30代はワークライフバランスを重視することが調査で分かっている。また今の若者は地縁・血縁のつながりにさほど縛られていないが、その分帰属先の企業の文化や価値観は彼らにとって大きな意味を持つ。

企業側もそれに応えてダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の頭文字を取ったDEIとサステナビリティー(持続可能性)の推進に注力する姿勢をアピールする。

同様に機関投資家と国際的な調査機関が環境、社会、ガバナンスの頭文字を取ったESGなどの基準で企業を評価するようにもなった。今のところESGやDEIの取り組みは大企業のほうがはるかに活発だが、今後は中小企業にもそうした動きが波及し、資源の乏しい零細企業も対応を迫られるようになるだろう。

1970年代までの高度経済成長期には頑張って働けば終身雇用が保証され、勤続年数に伴って自動的に給与は上がった。「経済が成長するなかではハードワークに耐えて当然」という空気があったと、企業の人権デューデリジェンス(事業を通じて及ぼし得る人権への悪影響を特定し、防止・軽減する取り組み)を専門とするオウルズコンサルティンググループの石井麻梨マネジャーは話す。

「企業戦士」という言葉があるように日本では理想的な社員は常に男性だったと、一橋大学大学院経営管理研究科の小野浩教授は指摘する。男たるもの家事子育ては妻に任せ、会社のために死力を尽くすべし、という風潮があった。

だが日本経済が長期の停滞に陥った上、婚姻率が下がり働く女性が増えて、この想定は崩れつつある。今では、社員の事情に配慮して転勤のないポストを用意する企業も出てきた。

コロナ禍でリモートワークが広く導入されたことも働き方を見直すきっかけとなった。昭和の就労形態に固執している企業は「転換を進められず、競争力が低下するだろう」と、小野は手厳しい。

日本の労働力の減少

資料:リクルートワークス研究所

人口の減少と少子高齢化が進むなか、企業は潜在的な労働力の掘り起こしに力を入れているようだ。その証拠に英シンクタンク「公的通貨・金融機関フォーラム」(OMFIF)の2023年8月のレポートによれば、日本の雇用者数は16年6月の6500万人から23年4月には6740万人に増えた。これはパートや契約社員が減り、正社員が290万人増えた結果だ。

労働供給が逼迫しているため、若い世代の求職者はバブル後世代よりも強気で雇用側と渡り合える。OMFIFは、今の日本の若者は親世代よりも所得水準が高くなると予測し(これは世界でも例外的な現象だ)、日本は「人口統計上のスイートスポット(最適な場所)にある」と結論付けている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国新規銀行融資、4月は予想以上の急減 貿易戦争で

ビジネス

関税の影響見極めにさらなるデータ必要=シカゴ連銀総

ワールド

イスラエル、ガザ各地攻撃で70人死亡 南部でハマス

ワールド

トランプ政権のはしか流行対応に懸念=ロイター/イプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 8
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 9
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中