部下がなぜか自発的に動きはじめてしまう、「具体化」の魔法とは?
「部下の仕事は、上司の指示に従うことである」という言葉を反対側の上司から見ると、「上司の仕事は、部下を指示に従わせることである」となる。部下が指示通りに動かないと、仕事にならないのだ。
いざ指示通りに動かない部下がいたらどうするのかというと、アメとムチを使うしかない。
とはいえ中間管理職の権限では「これやったらボーナス出すよ!」とか「これをやったら昇進だよ!」というようなアメはなかなか出せない。
必然的にムチを使う。声を張り上げ、権力をちらつかせ、お尻を叩いて部下を従わせようとする。他に手段がないのだ。
パワハラ好きでマウントをとることに喜びを感じる上司だけが高圧的になるのではない。この世界では、善良で職務に忠実なだけの上司も高圧的になっていくのだ。
部下からしても、これはつらい世界である。なぜなら、自分の仕事を変えるには、上司の指示を変える必要がある。
やりたいことをやるためには上司の指示を変えなければいけないわけだが、よく言われる通り、他人は変えられない。変えられるのは自分だけである。上司の指示を変えられない以上、淡々とやりたくない仕事を続けなければならない。
このように、「部下が上司の指示に従う世界」では、指示待ち人間が増えて仕事が進まず、上司はいつも部下を怒鳴りつけ、部下はやりたくない仕事をいやいやする。部下も上司も幸せになっていない。つまり、この世界は間違っているのだ。
忠実でも仕事ができない人に足りないのは「具体化」
では次に、真実の世界、「部下が上司の指示を具体化する世界」では何が起こるのかを見ていこう。
高木 「この本はイラスト使うからさ、ちょっと見積もりとってよ」 澤田 「あ、はい。分かりました。イラストレーターは誰に依頼しますか?」 高木 「お任せするよ。あ、でも相見積もりとりたいから、3人ぐらい声をかけといてよ」 澤田 (うーん、とりあえず先月お願いした粟島さんに声をかけるか......) 澤田 「粟島さん! 今月もお願いします! イラストを描いて欲しいので、見積もりをください!」 粟島 「あ、はい。分かりました。何点ぐらいのイラストですか?」 澤田 「あ、ちょっと確認しておきます」 粟島 「それで、納期はいつでしょう?」 澤田 「あ、それも確認しておきますね」 粟島 「......。対象読者は男性でしょうか? 女性でしょうか?」 澤田 「あ、それも編集長に聞いてみます!」 粟島 「......」
さて、果たして澤田君は仕事をしているのだろうか?