障がいのある人に、「アートの力」で自信と生きる道を──ものづくりブランド「fa」の挑戦
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「fa」の製品に採用されるイラストやデザインは、「New day in the city/新しい暮らしが始まる架空の街」などの各シリーズのテーマに沿って制作が進められる。とくにTシャツは人気商品で、売れ行きも好調だ。
また、アーティストがつくった作品は企画展に出展して買い手がつくこともある。最近では鎌倉の高級ホテルに納品したり、大手企業とのアートプロジェクトに採用されたり、大きな成果を上げている。作品をきちんと収益化していくことで、アーティストに還元され、さらに自信を深めていく循環につながる。
アーティストと地域がつながる拠点へ
順調なサイクルを生み出している一方で、課題もある。アーティストの活動や作品と、人々をつなげる接点の不足だ。西村氏は、リアルの場でのコミュニケーションを増やすべきだと考えているという。
「現状では、商品の販売はオンラインストアがほとんどで、作品を発表するにも外へ出ていって展示をするしかありません。もっと作品を見たいという地域からの要望もあるのですが、今のアトリエの広さでは迎え入れるのがなかなか難しいんです。だから、より多くの地域の方々が気軽に立ち寄れて、作品やアーティストと触れ合える、地域に開かれた施設が必要だと考えていました」
施設の移転・拡大へ立ちはだかったのが資金面の壁だった。そこで応募したのがアメリカン・エキスプレスの「RISE with SHOP SMALL 2023」。多様性に配慮したビジネスや店づくりを展開する日本の中小店舗経営者やショップオーナーの挑戦を、資金面や広報でサポートするプログラムだ。
A賞に選出された「fa」はサポートを活用し、来春にも佐賀市中心部に施設を移転する予定を立てている。アトリエやショップを併設したギャラリーになる予定で、いっそう地域や多様な人々とのつながりを深めていく考えだ。
「RISE with SHOP SMALL 2023」への応募の決め手になったのは、プログラムが掲げる、多様性に配慮した"ALWAYS WELCOME"なお店作りという理念への共感だったという。「『fa』の目指す世界は、『暮らしをおもしろく、フラットに』です」と、西村氏は言う。「アーティストもゲストも含めて誰もが障がいという概念を超えてフラットな視点で交わり、『そのままでおもしろい』のメッセージをこの拠点から伝えたいです」
これからも「fa」は佐賀から全国、世界へとカラフルなクリエイティビティを発信していく。地方だからこその住民とのつながりの強さ、のびのびと挑戦できる環境が「強みになっている」と、西村氏は感じている。
「新しい拠点では、作品の魅力に加えてアーティストのキャラクターやストーリーについても知ってもらいたいと思っています。イベントや体験も企画して、地域の住民が立ち寄りやすい空間にしていくとともに、県外から目的地として訪れてもらえるような場所にしていきたい。接点が増えれば増えるほど『fa』の魅力は伝わると思うんです」
その先にさらなるビジョンもある。障がいの有無にかかわらず、生きづらさを抱える人々を支援するサービスの構築だ。挑戦は続いていく──。
fa(ファア)
2020年2月に立ち上がった佐賀市拠点のライフスタイルブランド。展開するアパレルや日用品などのイラストやデザインは、就労継続支援B型事業所「GENIUS(ジーニアス)」の利用者たちが手がけている。