障がいのある人に、「アートの力」で自信と生きる道を──ものづくりブランド「fa」の挑戦
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「GENIUS」のアーティストのデザインが採用された「fa」の商品について説明する西村史彦氏
<アートなら、もっと輝ける人がいる...。障がいを抱える人たちが描いたデザインを商品化し、彼らに自信と生きる道を提示する「fa」の思いに迫る>
印象的なビジュアルがデザインされたアパレルや日用品を手がける「fa(ファア)」。そのユニークなアートはどうやって生み出されているのだろうか? ハンデを超えて強みや個性を発揮するアーティストたちが集まる佐賀市内のアトリエを訪ねた。
「障がい」「福祉」を語らない理由
「アートを使う、アートと暮らす。」をコンセプトとして、2020年に立ち上がったライフスタイルブランド「fa(ファア)」。独創的で目を引くデザインのイラストが入ったTシャツやキャップ、マグカップ、クッションなどを制作している。
商品にあしらわれるアートは、佐賀市内のアトリエで生み出されている。そのアトリエとは、就労継続支援B型事業所「GENIUS(ジーニアス)」。知的障がいや精神疾患などのある利用者たちが日々、制作活動を行なっている。彼らは、作品制作や仲間との交流を通じて就労訓練を行なうともに、個々人で作品をつくるアーティストだ。
「fa」のそうした制作の背景を知らないまま、ただ商品を気に入って購入したという人も少なくないはずだ。というのも、「fa」のオンラインストアやSNSなどでは、これらのデザインが障がいのある人によるアートだと積極的には語っていないからだ。
「ブランドでは、障がいも福祉もあまり表に出していません。障がいというタグづけで見るのではなくて、まず純粋に作品自体を見ていただきたい。そのデザインやアートそのものを素敵だなと思ってもらうことを入り口にして、そのうえでアーティストのキャラクターを知ってもらいたいと考えているんです」
「GENIUS」を運営する「すみなす」代表の西村史彦氏(37歳)はそう語る。
アートに障がいも障壁もない
西村氏によって「fa」や「GENIUS」が始動した背景を説明するには、西村氏自身の半生を少しさかのぼる必要があるだろう。佐賀市で生まれ育った西村氏は、自身も「表現」と切り離せない日々を送ってきた。
子どもの頃から絵を描くことが好きで、高校時代には仲間とバンド活動に明け暮れた。大学の芸術学部に進学するもすぐに中退。5年ほどの会社員生活を経て、20代半ばにはカナダへと渡ってレゲエを歌った。「ものごとが続かなくて、上手に生きられないなと思うことがありました」と西村氏は振り返る。
カナダから帰国後に、母親が経営する高齢者介護施設で働き始めて福祉との関わりを持ち約8年間勤務。その間に結婚し、授かった長男は足に生まれながらの障がいがあった。街中で見かけた障がいのあるアーティストの作品に深く感動したのもその頃だった。「これまでの経験がバチッとかみ合ったように感じました」と障がい者就労支援事業を起こし、「『生きづらさ』を『おもしろさ』に転換する」というビジョンを掲げた。