環境問題「光害」に対処し、アジア初カテゴリーの星空保護区に。福井県大野市はいかに認定を勝ち取ったか
光害に対応した照明の改修を担当したのは電機メーカー大手のパナソニックだ。星空保護区認定を受ける照明の条件は、照明器具から上空へ漏れる光(上方光束)が一切なく、光の色合いを示す色温度は3000K以下、温かみのある色であること。
照明器具のリーディングカンパニーであるパナソニックは、2020年1月に国内メーカーとして初めてダークスカイ認証を取得しており、エリア内に防犯灯58台、道路灯36台、その他光害対策照明器具を約260台設置した。
全ての照明を点検・施工するには多大な時間と労力、費用を要したが、地元の電気業者の協力を得て、一つひとつ進めていったという。他方で、住民の理解を得る必要性にも迫られていた。
「星空を守るには、照明を暗くしなければならない。しかし、照明には夜間における市民の安全や犯罪防止を図る目的もある。このギャップに苦しんだ。施設の運営者や管理者と密なコミュニケーションを取りながら説明をして、生活空間の明るさを保ちながら、見回りなどのソフト面で子どもたちの安全性を担保する努力をお願いした」と下川教授は言う。
自然・文化的な遺産は、実は認定よりも維持していくことが非常に大変だ。「行政だけでなく地域住民が星空保護に関わり、観光客が増えても対応できる組織をつくること。それが星空だけでなく、生態系や地球全体を守っていくことにつながる」と下川教授は話す。
世界に誇る星空を持続可能な地域経済の活性化につなげる
2024年3月に北陸新幹線の福井~敦賀間開業、2026年春には中部縦貫自動車道の県内全線開通が予定され、新たな高速交通ネットワークの形成が進む福井県。石山志保・大野市長は「星空をはじめとする観光資源を活かして地域経済の活性化につなげていきたい」と展望を語る。
「福井工業大学、パナソニックとの縁や、学校関係者・星空観測団体などの協力がなければここまで来られなかった。地元民にとって星空がきれいなのは日常のことで、その素晴らしさになかなか気付かない。星空保護区申請への取り組みを通じて、大野市の星空は世界に誇っていいんだと再認識できた」