「環境分野の仕事に就きたい」...環境業界の公正性と多様性を実現する「求人サイト」の挑戦
「気候危機については不安や絶望をあおるような話が多すぎる」と話すドラットマン COURTESY OF KRISTY DRUTMAN
<なぜ環境業界は白人ばかりなのか? 「環境レイシズム」にノーを突き付ける「ブラウン・ガール・グリーン」の取り組みについて>
超大型台風「ハイエン」がフィリピンに上陸した2013年、クリスティー・ドラットマンはニュージャージー州在住の高校生だった。母親の母国が壊滅的な被害を受けたことはニュースで知った。「その瞬間、目が覚めた」と彼女は言う。
気候変動が世界にもたらす大災厄に、そして貧しい人たちがより深刻な被害を受けることに気付いたのだ。それが彼女の活動の原点になった。
27歳の今、ドラットマンは環境分野における多様性と社会的公正の実現を目指し、ソーシャルメディアのインフルエンサーとして、また若き起業家として活躍している。
ドラットマンはカリフォルニア大学バークレー校で環境政策を学んだが、講義にも気候変動対策の多くにも何かが欠けていると感じた。環境分野には「私みたいな外見の人は不在」で、これでは気候危機の影響を真っ先に受ける人たちの声が政策に反映されないと危機感を抱いたのだ。
そこで「ブラウン・ガール・グリーン」としてインスタグラムのアカウントを開設。「ユダヤ人とフィリピン人の血を引く者として、環境保護活動に多人種、多文化の声を持ち込もうとした」と話す。
同じユーザーネームでポッドキャストも始め、アジアの貧しい国々が汚染を垂れ流しているなどという一部の環境活動家の不公正な主張を批判。深海の資源開発に反対するトンガの人々の闘いを紹介したり、気候変動対策に取り組む先住民女性を支援するなど、「環境レイシズム」にノーを突き付ける活動を行ってきた。
本人も驚いたことに、フォロワーは増え続け、大学を卒業する頃には7万5000人近くに上っていた。おかげで環境問題で講演をしたりコンサルタントとして各地を回るようになった。
インフルエンサーとしての活動で食べていけたのは幸運だった。環境関連の仕事に就きたかったが、なかなか就職先が見つからなかったからだ。ただ、自分が就職に苦労した経験からなぜ若手、特に非白人は環境分野の仕事に就きにくいのかと考えさせられた。
誰かの役に立てばと環境関連の求人広告を探し、自身のインスタグラムのフィードに投稿し始めた。反響は驚くほど大きく、投稿を見て就職できたという報告も相次いだ。
やがて環境関連の団体や企業から求人広告の投稿依頼が舞い込むようになり、これは事業化できると考えて、友人と共に就職斡旋サイト「グリーン・ジョブズ・ボード」を創設した。