最新記事
ビジネス

「環境分野の仕事に就きたい」...環境業界の公正性と多様性を実現する「求人サイト」の挑戦

2023年10月13日(金)12時50分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)
クリスティー・ドラットマン,  KRISTY DRUTMAN

「気候危機については不安や絶望をあおるような話が多すぎる」と話すドラットマン COURTESY OF KRISTY DRUTMAN

<なぜ環境業界は白人ばかりなのか? 「環境レイシズム」にノーを突き付ける「ブラウン・ガール・グリーン」の取り組みについて>

超大型台風「ハイエン」がフィリピンに上陸した2013年、クリスティー・ドラットマンはニュージャージー州在住の高校生だった。母親の母国が壊滅的な被害を受けたことはニュースで知った。「その瞬間、目が覚めた」と彼女は言う。

気候変動が世界にもたらす大災厄に、そして貧しい人たちがより深刻な被害を受けることに気付いたのだ。それが彼女の活動の原点になった。

27歳の今、ドラットマンは環境分野における多様性と社会的公正の実現を目指し、ソーシャルメディアのインフルエンサーとして、また若き起業家として活躍している。

ドラットマンはカリフォルニア大学バークレー校で環境政策を学んだが、講義にも気候変動対策の多くにも何かが欠けていると感じた。環境分野には「私みたいな外見の人は不在」で、これでは気候危機の影響を真っ先に受ける人たちの声が政策に反映されないと危機感を抱いたのだ。

そこで「ブラウン・ガール・グリーン」としてインスタグラムのアカウントを開設。「ユダヤ人とフィリピン人の血を引く者として、環境保護活動に多人種、多文化の声を持ち込もうとした」と話す。

同じユーザーネームでポッドキャストも始め、アジアの貧しい国々が汚染を垂れ流しているなどという一部の環境活動家の不公正な主張を批判。深海の資源開発に反対するトンガの人々の闘いを紹介したり、気候変動対策に取り組む先住民女性を支援するなど、「環境レイシズム」にノーを突き付ける活動を行ってきた。

本人も驚いたことに、フォロワーは増え続け、大学を卒業する頃には7万5000人近くに上っていた。おかげで環境問題で講演をしたりコンサルタントとして各地を回るようになった。

インフルエンサーとしての活動で食べていけたのは幸運だった。環境関連の仕事に就きたかったが、なかなか就職先が見つからなかったからだ。ただ、自分が就職に苦労した経験からなぜ若手、特に非白人は環境分野の仕事に就きにくいのかと考えさせられた。

誰かの役に立てばと環境関連の求人広告を探し、自身のインスタグラムのフィードに投稿し始めた。反響は驚くほど大きく、投稿を見て就職できたという報告も相次いだ。

やがて環境関連の団体や企業から求人広告の投稿依頼が舞い込むようになり、これは事業化できると考えて、友人と共に就職斡旋サイト「グリーン・ジョブズ・ボード」を創設した。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中