最新記事
アメリカ経済

米自動車労組、GMと最高賃金33%引き上げなどで暫定合意 3大自動車メーカーとの一斉スト終了へ

2023年10月31日(火)09時32分
ロイター
GMのロゴ

米自動車大手ゼネラルモーターズと全米自動車労働組合(UAW)は、労使交渉が暫定的な合意に達したと表明した。これにより、史上初となる米3大自動車メーカーに対するUAWによる一斉ストライキは事実上終結した。写真はデトロイトで2021年3月撮影(2023年 ロイター/Rebecca Cook)

米自動車大手ゼネラルモーターズと全米自動車労働組合(UAW)は30日、労使交渉が暫定的な合意に達したと表明した。これにより、史上初となる米3大自動車メーカー(ビッグ3)に対するUAWによる一斉ストライキは事実上終結した。

UAW執行部は29日、米フォード・モーターと暫定合意した労働協約を承認。28日にはクライスラーの親会社であるステランティスとも労使交渉で合意に達していた。

UAWは、フォードとステランティスと合意した賃上げとほぼ同等の条件をGMからも勝ち取った。熟練労働者の最高賃金が33%引き上げられるほか、GMは新労働契約に基づき、退職者に2500ドルの一時金を支払う。

UAWのフェイン会長は30日、「われわれのストライキはGMから最後の一銭まで搾り取ったと心から信じている。彼らはわれわれを過小評価していた。これらの企業は何が待ち受けているのか全く想像していなかった」とビデオ演説で語った。

また、UAWはビッグ3に対するストを正式に停止したと述べた。全ての組合員による契約承認に向け、UAWの地域幹部が11月3日にデトロイトを訪問し、GMとの合意内容を検討する。

9月15日から始まったビッグ3に対する一連のストには3社の組合員約15万人のうち最終的に5万人近くが参加した。

UAWによると、GMの従業員はストを終了し、職場に復帰する。

GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は「UAWと暫定合意に達したことを喜ばしく思う。チームの貢献を反映するものであると同時に、われわれが将来への投資を継続し、米国で良質な雇用を提供することを可能にするものだ」と述べた。

バイデン米大統領は30日、暫定合意を「素晴らしい」と称賛した。

複数の関係筋によると、新たな労働契約により、GMの人件費は向こう4年半で70億ドル増加する見通し。コックス・オートモーティブのチーフエコノミスト、ジョナサン・スモーク氏は「消費者がコストの一部を負担することになる」と指摘。ただ「コストを完全に転嫁するのは容易でないため、自動車メーカーは効率化を図るか、人件費の上昇を吸収できる高価格車種に生産を限定せざるを得なくなる」との見方を示した。

ビッグ3はUAWの要求についてコストの大幅増につながり、米電気自動車(EV)大手テスラやトヨタ自動車などと比較して不利な立場に立たされると主張したが、UAWはGMとの暫定合意に先立ち、ソーシャルメディアへの投稿で、2028年の労使交渉では「ビッグ5またはビッグ6」の間で行われることを望んでいるとし、交渉拡大にコミットしているとしていた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中