今、ジャニーズを切るより企業がすべきこと...必要なのは懲罰ではなく「影響力の行使」
How Businesses Can Seek Justice
「責任ある広告主」とは
「過去にさまざまな報道があったことは耳にしていましたが、それが事実であるかどうかを確認せず事実認定に至りませんでした。今回の調査や記者会見によって明らかになったことで、重大な事実であることを認識したため、報道内容を精査した上で当社として確認すべきだったと感じています」(アサヒグループホールディングス)
「タレントの起用については広告代理店を通して行っています。今年大きく報道されるまでは、詳細を把握しておりませんでした」(キリンホールディングス)
「8月29日の再発防止特別チームによる調査結果の報告および9月7日のジャニーズ事務所の記者会見で事実を知りました」(サントリーホールディングス)
現段階でタレントの広告起用はないものの、過去にジャニーズのグループと大々的なキャンペーンを展開していたローソンは「同事務所の過去の報道や訴訟記録について調査には至っておりませんでした」と回答した。
アサヒのように過去の調査不足を明確に認めた上で所属タレントの起用見直しを早期に表明した企業もあるが、起用を続けながら「責任ある広告主」として、再発防止に向けて行動計画の提出を求める(朝日新聞、9月14日)P&Gのような対応もある。
当事者の会にも助言をする弁護士、蔵元左近は「ビジネスと人権」問題における国内の第一人者である。企業の責任の取り方をどのように評価するか。蔵元は従来型の「リスクマネジメント」と「ビジネスと人権」ではアプローチが異なると語る。
「国連が出した『ビジネスと人権に関する指導原則』でも、取引停止(=契約終了)は最後の手段だ。ジャニーズ事務所との取引は経営上のリスクだから早急に切ればいいというやや乱暴な考えが横行しているように見える。それでは問題は解決しない。
影響力を適切に行使し、相手に対して『当社はこういう問題意識を持っている。この時期までにこれこれの改善策の実施を求める。改善できないのなら必要な措置を取る』と具体的な改善策を求めるなど段階を踏んでいくのがスタンダードな手法だ」