最新記事
自動車

常識破りのイーロン・マスク、テスラ「ギガキャスト」に「砂」活用し他社引き離す

2023年9月19日(火)20時47分
ロイター
テスラのモデルYのフレーム

テスラはモデルYでさらに一段上の「ギガキャスティング」によるフレーム製造を行っている。Munro Live / YouTube

米電気自動車(EV)大手テスラは、車体の主要構造部分を1回のダイカスト鋳造プレスで成型する「ギガキャスティング」と呼ばれる技術のパイオニアだ。この手法は生産の効率化や生産コストの削減につながることからライバル企業はテスラに追い付こうと必死だが、テスラがさらなる高度化を進めていることが関係者5人の話で明らかになった。

テスラは「モデルY」の前部と後部の筐体を一体成型するために6000トンから9000トンの加圧力を持つ巨大な鋳造プレス機を使っている。

同関係者らによると、テスラはプラットフォーム(車台)と呼ばれる複雑な車体下部のほぼ全てを一体成型する革新的な技術の実用化に近づいている。自動車の下部は約400点の部品で構成されており、これが1つになればテスラは競合他社とのリードをさらに広げることになる。

この手法はイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が3月に打ち出した「アンボックスト」(自動車各部を一程程度のまとまった部品として造り、後で一体化して車両として組み立てる手法)という製造戦略の中核を成し、今後10年間で数千万台の安価なEVを生産しつつ、利益を上げるという計画の要だという。

米ケアソフト・グローバルのテリー・ウォイコウスキー社長は、もしテスラが車体下部のほとんどをギガキャスティング化することに成功すれば、自動車の設計・製造方法の変革がさらにと進むとみる。「ものすごく強力な手法だ。業界に大きな影響を及ぼし得るが、非常に困難な課題もある」と話る。「鋳造はかなり難しく、特に大型で複雑なものほど困難だ」と言う。

関係者2人によると、テスラは新たな設計・製造技術で車両の開発期間を18―24カ月に短縮し確立できると解説した。今のところライバルの多くは3年から4年を要している。

関係者5人によると、テスラが2020年代半ばまでに2万5000ドルで発売しようとしている小型EVには、前部と後部、そしてバッテリーが搭載される中央の底部を組み合わせた単一の大きなフレームが使われる可能性がある。

テスラは早ければ今月中にもこのプラットフォーム(車台)をダイキャストで一体成型するかどうかの決断を下すと見られている。関係者3人は、計画がこのまま進んでも設計検証の結果次第では最終製品が変更される可能性があると述べた。

ロイターはこの記事を配信するに当たりテスラとマスク氏にコメントを求めたが、回答はなかった。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 取引禁止

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中