最新記事
経営

「会社が赤字!」事業撤退はどのタイミングですべきか? 弁護士が解説

2023年6月29日(木)20時10分
大山滋郎 ※経営ノウハウの泉より転載
経営者

Chadchai Krisadapong-iStock.

<「将来は何とかなる」希望があれば、続けてよいのか。会社をうまくたたんだ事例も、失敗した事例も見てきた弁護士が指南する判断基準とは>

「戦争と恋愛は始めるのは簡単だが、止めるのは難しい」なんて言葉があります。儲かっている事業ならこんなことを考える必要はありません。

また、赤字の企業でも、「それでも将来は何とかなるのでは?」という希望があるうちは、なかなか撤退の決断は難しいようです。

それでも、タイミングや判断を誤ってしまうと、多くの人を傷つけることになってしまいます。しかし、会社をたたむという一大決心はそう簡単にできるものではありません。

弁護士として筆者も様々な例を見てきました。今回は、会社をいつたたむかというタイミングと判断基準を考えてみましょう。

会社をたたむタイミングとは

事業が難しいのは、赤字だからといって、「当然に止めるべきだ!」とはならないでしょう。Amazonなんて創業以来長期間赤字でした。楽天も基本的に赤字企業としてスタートしています。赤字だからダメとはいえないのです。

中小企業でも、当初は顧客を集めるために投資をするようなビジネスモデルですと、しばらくは赤字が続きます。しかし、一定のポイントを超えると、急激に利益がでてくることも期待できます。だからこそ赤字企業でも会社をたたむ決断ができない場合がでてくるのでしょう。

■会社をうまくたたんだ事例

筆者が現実に対応した事例です。基本的には、余力があるうちにたたんでいるケースがうまくいっています。

たとえば、飲食店に材料を下ろしている問屋さんがありました。収益が悪化する中で、今後の見通しも立たず、たたむことを決意したのです。基本的に、顧客の飲食店や、従業員なども同業他社に引き受けてもらい、大きな傷を残すことなくたたむことができました。

結果論ですが、その少し後にコロナが猛威を振るい、飲食店のみならず、そこに材料を下ろしている問屋も大きなダメージを受けずに済んだのです。早めの判断が功を奏した事例といえます。

■会社をたたむのに失敗した事例

一方、失敗といえる事例もありました。

こちらは親から引き継いだ製造業です。かなり赤字がかさんでいるのですが、そんな中で単年の黒字が出る年もあるといった状況でした。親から継いだ会社ということもあり、従業員の首を切れない中で、たたむことを決められなかったのです。

いくつか不動産を持っていただけに、それらを売却することで赤字を補填して、なんとか会社として生きながらえていたという状況でした。売る土地がなくなった後でも、追加融資を受けて頑張りますが、最終的に破産となった事例です。そして、土地が残っているうちにたたんでおけばよかったと、残念な気持ちになるのです。

この他にも、事業がうまくいかない中、親族にお願いして、その不動産を担保にした追加融資を受けたような事例もありました。相当な高利の融資です。こちらも最終的に撤退できずに破産となりましたが、このような事例では親族との人間関係まで壊してしまう恐れがあります。

(参考記事)「残業代が増えて経営が......」残業代増加リスクへの対応策を弁護士が解説

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国の秘密ネットワーク、解雇された米政府職員に採用

ビジネス

米、輸出制限リストに80団体追加 中国インスパー子

ワールド

トランプ氏、情報漏洩巡り安保チーム擁護 補佐官「私

ワールド

欧州市民のEU支持が過去最高の74%、安全保障強化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    【クイズ】トランプ大統領の出身大学は?
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中