最新記事
経営

「会社が赤字!」事業撤退はどのタイミングですべきか? 弁護士が解説

2023年6月29日(木)20時10分
大山滋郎 ※経営ノウハウの泉より転載

事業撤退の判断基準

そのため、会社をたたむか・たたまないかの判断は、何らかの基準を持つことが大切なようです。一般的にいわれている基準として、以下が挙げられます。

【1】市場と需要から考える

事業の将来性を判断するには市場状況の分析が必要です。市場の需要や競合状況などを考慮し、将来的な市場規模や需要の拡大の見通しを慎重に評価しましょう。

【2】競合を見て考える

判断には競合状況の分析や自社の競争力、市場占有率などが重要となります。競合他社が同じ製品やサービスを提供していて、自社の市場シェアが低下している場合、他社と差別化するための戦略や市場参入の再評価も必要となります。

【3】社内リソースから考える

必要なリソースを確認する必要があり、資金だけでなく、人材・設備・技術といった必要なリソースが不足している場合は判断することができるでしょう。

また、外部の投資家や銀行からのアドバイスをしっかりと確認することが必要です。銀行がさじを投げているのに、更に高利のところから資金調達をして、のっぴきならないところまでいってしまったような例を、いくつも見てきました。極めてまれな例外はあるにしても、通常は外部の人が見ても厳しい場合は、立て直しにくいのです。

その他、うまく会社をたたむ方法

会社をたたむといっても、単純にその事業を止めるだけではありません。"同業他社に譲り渡す"ことも一つのあり方です。うまく譲渡できれば、雇用関係を維持できますし、損害を最小限に抑えることも可能となります。

また、顧客がいるビジネスの場合、ペイする価格帯まで値段を上げて、事実上顧客が離れていくことで事業を終わらせる一方、それまでは価格を上げることで高収益とするなどのやり方もあるようです。それなりにうまく利益を出しているような企業もあり、筆者も感心したこともあります。

最後に

会社をたたむ際に難しいのは、責任感があり、従業員思いの経営者の方が、なかなか決断できず結果的に多くの人を苦しめてしまうケースがあることです。少なくとも経営者本人が迷うような状態なら、客観的に見ればたたんだ方がよいところまで来ていると考えるべきでしょう。

しかし、一度うまくいかなくとも、その後のキャリアの積み方はさまざまです。経営者の経験を生かし経営コンサルタントへの転身や、経営の視点をもった視座の高いサラリーマンとして復職することなど、幅広い選択肢があるでしょう。

また、もう一度起業へチャレンジすることも選択肢の一つです。実際に、会社をたたんだ後に再起業し、現在では東証プライムに上場するまで成長させた経営者もいます。会社をたたんでしまうことが末路ではないのです。取り返しのつかないことになる前に、柔軟な判断するように心がけましょう。

(参考記事)【経営者・個人事業主の悩み...】マイクロ法人で起きた業務に関するお悩みまとめ

[執筆者]
大山滋郎
横浜パートナー法律事務所 代表弁護士
東京大学法学部卒。メーカー在籍中に米国のロースクールに留学し、ニューヨーク州弁護士の資格取得。その後、勤務のかたわら司法試験に合格。外資系大手弁護士事務所在籍を経て、2007年4月1日より独立開業。現在7名の弁護士が在籍しています。一部上場のメーカーの法務、知的財産部に15年以上在籍した経験を生かして、企業法務のサポートを行います。

2023.06.12

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中