「会社が赤字!」事業撤退はどのタイミングですべきか? 弁護士が解説
事業撤退の判断基準
そのため、会社をたたむか・たたまないかの判断は、何らかの基準を持つことが大切なようです。一般的にいわれている基準として、以下が挙げられます。
【1】市場と需要から考える
事業の将来性を判断するには市場状況の分析が必要です。市場の需要や競合状況などを考慮し、将来的な市場規模や需要の拡大の見通しを慎重に評価しましょう。
【2】競合を見て考える
判断には競合状況の分析や自社の競争力、市場占有率などが重要となります。競合他社が同じ製品やサービスを提供していて、自社の市場シェアが低下している場合、他社と差別化するための戦略や市場参入の再評価も必要となります。
【3】社内リソースから考える
必要なリソースを確認する必要があり、資金だけでなく、人材・設備・技術といった必要なリソースが不足している場合は判断することができるでしょう。
また、外部の投資家や銀行からのアドバイスをしっかりと確認することが必要です。銀行がさじを投げているのに、更に高利のところから資金調達をして、のっぴきならないところまでいってしまったような例を、いくつも見てきました。極めてまれな例外はあるにしても、通常は外部の人が見ても厳しい場合は、立て直しにくいのです。
その他、うまく会社をたたむ方法
会社をたたむといっても、単純にその事業を止めるだけではありません。"同業他社に譲り渡す"ことも一つのあり方です。うまく譲渡できれば、雇用関係を維持できますし、損害を最小限に抑えることも可能となります。
また、顧客がいるビジネスの場合、ペイする価格帯まで値段を上げて、事実上顧客が離れていくことで事業を終わらせる一方、それまでは価格を上げることで高収益とするなどのやり方もあるようです。それなりにうまく利益を出しているような企業もあり、筆者も感心したこともあります。
最後に
会社をたたむ際に難しいのは、責任感があり、従業員思いの経営者の方が、なかなか決断できず結果的に多くの人を苦しめてしまうケースがあることです。少なくとも経営者本人が迷うような状態なら、客観的に見ればたたんだ方がよいところまで来ていると考えるべきでしょう。
しかし、一度うまくいかなくとも、その後のキャリアの積み方はさまざまです。経営者の経験を生かし経営コンサルタントへの転身や、経営の視点をもった視座の高いサラリーマンとして復職することなど、幅広い選択肢があるでしょう。
また、もう一度起業へチャレンジすることも選択肢の一つです。実際に、会社をたたんだ後に再起業し、現在では東証プライムに上場するまで成長させた経営者もいます。会社をたたんでしまうことが末路ではないのです。取り返しのつかないことになる前に、柔軟な判断するように心がけましょう。
(参考記事)【経営者・個人事業主の悩み...】マイクロ法人で起きた業務に関するお悩みまとめ
[執筆者]
大山滋郎
横浜パートナー法律事務所 代表弁護士
東京大学法学部卒。メーカー在籍中に米国のロースクールに留学し、ニューヨーク州弁護士の資格取得。その後、勤務のかたわら司法試験に合格。外資系大手弁護士事務所在籍を経て、2007年4月1日より独立開業。現在7名の弁護士が在籍しています。一部上場のメーカーの法務、知的財産部に15年以上在籍した経験を生かして、企業法務のサポートを行います。
2023.06.12