「会社が赤字!」事業撤退はどのタイミングですべきか? 弁護士が解説
Chadchai Krisadapong-iStock.
<「将来は何とかなる」希望があれば、続けてよいのか。会社をうまくたたんだ事例も、失敗した事例も見てきた弁護士が指南する判断基準とは>
「戦争と恋愛は始めるのは簡単だが、止めるのは難しい」なんて言葉があります。儲かっている事業ならこんなことを考える必要はありません。
また、赤字の企業でも、「それでも将来は何とかなるのでは?」という希望があるうちは、なかなか撤退の決断は難しいようです。
それでも、タイミングや判断を誤ってしまうと、多くの人を傷つけることになってしまいます。しかし、会社をたたむという一大決心はそう簡単にできるものではありません。
弁護士として筆者も様々な例を見てきました。今回は、会社をいつたたむかというタイミングと判断基準を考えてみましょう。
会社をたたむタイミングとは
事業が難しいのは、赤字だからといって、「当然に止めるべきだ!」とはならないでしょう。Amazonなんて創業以来長期間赤字でした。楽天も基本的に赤字企業としてスタートしています。赤字だからダメとはいえないのです。
中小企業でも、当初は顧客を集めるために投資をするようなビジネスモデルですと、しばらくは赤字が続きます。しかし、一定のポイントを超えると、急激に利益がでてくることも期待できます。だからこそ赤字企業でも会社をたたむ決断ができない場合がでてくるのでしょう。
■会社をうまくたたんだ事例
筆者が現実に対応した事例です。基本的には、余力があるうちにたたんでいるケースがうまくいっています。
たとえば、飲食店に材料を下ろしている問屋さんがありました。収益が悪化する中で、今後の見通しも立たず、たたむことを決意したのです。基本的に、顧客の飲食店や、従業員なども同業他社に引き受けてもらい、大きな傷を残すことなくたたむことができました。
結果論ですが、その少し後にコロナが猛威を振るい、飲食店のみならず、そこに材料を下ろしている問屋も大きなダメージを受けずに済んだのです。早めの判断が功を奏した事例といえます。
■会社をたたむのに失敗した事例
一方、失敗といえる事例もありました。
こちらは親から引き継いだ製造業です。かなり赤字がかさんでいるのですが、そんな中で単年の黒字が出る年もあるといった状況でした。親から継いだ会社ということもあり、従業員の首を切れない中で、たたむことを決められなかったのです。
いくつか不動産を持っていただけに、それらを売却することで赤字を補填して、なんとか会社として生きながらえていたという状況でした。売る土地がなくなった後でも、追加融資を受けて頑張りますが、最終的に破産となった事例です。そして、土地が残っているうちにたたんでおけばよかったと、残念な気持ちになるのです。
この他にも、事業がうまくいかない中、親族にお願いして、その不動産を担保にした追加融資を受けたような事例もありました。相当な高利の融資です。こちらも最終的に撤退できずに破産となりましたが、このような事例では親族との人間関係まで壊してしまう恐れがあります。