美容整形手術数ナンバーワンの韓国、日本人女性をターゲットに動き出す
美容整形で問題となっている代理医師疑惑を払拭するため、多くのクリニックが手術動画を撮影。また立ち入りを認めることもある(撮影=筆者)
<Kビューティーが人気の日本に韓国・美容整形業界が狙いを向けた>
韓国の美容整形外科が日本人患者の取り込みに力を入れはじめている。美容医療アプリ運営会社が東京で相談会を開催、また美容整形情報を発信する会社が韓国美容情報誌「K-Beauty」を発刊、大阪を中心に配布している。美容整形外科医院が集中するソウル市江南区も日本人の誘客に取り組んでいる。
韓国は人口あたりの美容整形手術件数が世界1位の美容整形大国だ。親たちは子供の卒業祝いに整形手術をプレゼントする。就職活動を前に整形手術を受ける学生や自分の顔に不満を持って整形手術を受ける社会人、シワ除去や脂肪吸引手術を受ける中高年も珍しくない。芸能人はいうまでもなく、若々しい印象を出したい政治家や企業トップなどあらゆる人が美容整形手術を受けている。授業参観でどの生徒の親なのか見当がつかない母親が少なからずいるという。
コロナ禍のマスク着用で美容整形が増加
新型コロナウイルスのパンデミックが韓国国内にも広がると韓国政府は新型コロナウイルスの拡大を防止するため、マスク着用を義務化した。すると、美容整形手術を受ける人が増加しだした。整形手術後は、腫れがひくまで数日から1週間程度、手術痕をガーゼで覆うので、普段なら整形手術を受けたことが周りに知れるが、マスクの義務化で隠すことが容易になったのだ。また人と接する機会が少ない在宅勤務やオンライン授業の増加も美容整形を後押しした。
クレジットカード会社のハナカードが2020年、美容整形外科のカード決済を分析したところ、前年を10%上回っていた。クリニックの数も増えている。国税庁のデータによると2018年から2020年、美容整形外科クリニックは年4%のペースで増えていたが、2020年から22年の増加率は年8%で、2019年2月に1455か所だった美容整形外科クリニックは、22年2月には1640カ所まで増加した。
美容整形手術を受ける韓国人が増えた一方、外国人を多く抱えていた美容整形外科クリニックは経営危機に見舞われ、廃業するところも出てきた。2022年8月、整形手術を受けた韓国人が、手術費と術後の管理費と合わせて340万ウォンを分割払いで決済したが、手術後の管理を予約しようにも連絡が取れず、廃業したことがわかったという。患者はカード会社にサービスを受けられない残金の取り消しを要求。カード会社が拒絶したため、韓国消費者院に訴えた。消費者院は「割賦取引に関する法律」により、カード会社は消費者に残金を請求できないと通知した。