美容整形手術数ナンバーワンの韓国、日本人女性をターゲットに動き出す
外国人には免税措置も
韓国の美容整形外科は1975年に誕生した。主に富裕層が利用していたが、経済成長を遂げた90年代に大衆化した。2001年には米国メディアが韓国を「整形手術天国(The Paradise of Plastic Surgery)」と評したほどだ。
韓国が美容整形大国として認知されると、外国人が整形目的で訪韓するようになる。整形目的の外国人は2010年に1万人を突破、その後も右肩上がりで増え続け、2019年には9万494人に達している。
韓国政府は2015年、一部の美容整形を免税にする税制改正を行なった。韓国に居住しない外国人が美容整形手術を受けると、日本の消費税に相当する付加価値税の還付が受けられることになったのだ。
税金還付は2019年には14万1776件に達したが、コロナ・パンデミックが拡がった20年は2万6899件、翌21年は3015件にとどまり、19年と比べて97.8%減少した。還付を受けた外国人の国籍割合は、コロナ禍前とほとんど変わらないなか、日本人の減少が目立っている。
トラブル警告する中国から日本へ誘客をシフト
日本人はシワ除去など手術費が安い"プチ整形"手術が多く、1件あたりの手術費は中国人がはるかに高い。コロナ収束にともなう往来の再開を受けて、中国人に期待を寄せるクリニックもあったが、ブレーキをかける事故が起きた。23月1月に瑞草区の整形外科で手術を受けた20代の中国人女性が心肺停止状態となり、搬送された病院で死亡が確認されたのだ。
中国最大のポータルサイト「百度(バイドゥ)」では死亡した女性への哀悼と合わせて、韓国の美容整形を批判するコメントが相次いだ。事故から2カ月経って沈静化が見えた3月23日、在韓中国大使館が「韓国整形手術には失敗が多い」と公示して、美容目的で韓国を訪れる自国民を牽制。中国人の誘客が厳しくなった美容整形外科は日本人の誘客に力を入れることにした。
韓国美容整形が外国人に人気がある理由は技術と安さだ。美容整形に限らず、手術の力量は施術数に比例する。韓国人の施術で得た経験が外国人の誘客に役立っている。また江南のある整形外科院長は値上げをすると患者を他院に奪われるので、値段を抑えるしかないと話す。美容整形業界全体の低価格の背景には熾烈な競争があるのだ。
日本女性が韓国人化?
インバウンドに詳しいある日本人は、韓国人化した日本人女性を目にすることが増えたという。インバウンド観光業者は、来店客の国籍を判断して話しかけることが多い。
日本人と韓国人の特に女性は、化粧とヘアスタイルが異なるし、顔もわずかながら違いがある。筆者も化粧とヘアスタイルで9割以上、顔では8割以上、見分けがつく。長年、インバウンドに携わってきた人ならほとんど見分けられるだろう。ところが、韓国で整形手術を受けた人の顔は韓国人風になりがちで、日本語で話しかけるか韓国語で話しかけるか迷うことが増えたという。美容整形業界の売上増が観光業の売上を奪いかねないという皮肉な影響が出ているわけだ。