混迷のEV充電規格戦争に衝撃 フォードとの提携でテスラ方式が北米の標準になるか?
米電気自動車(EV)販売1位、2位のテスラとフォード・モーターが充電設備を巡り手を結んだことで、業界に動揺が広がっている。写真はテスラの充電設備。上海で2021年3月撮影(2023年 ロイター/Aly Song)
米電気自動車(EV)販売1位、2位のテスラとフォード・モーターが充電設備を巡り手を結んだことで、業界に動揺が広がっている。米国のEV充電規格を巡る不透明感が意識され、苦戦しているEV充電設備スタートアップ企業の命運に暗雲が垂れ込めている。
フォードは5月、北米に1万2000カ所以上あるテスラの急速充電設備「スーパーチャージャー」を、2024年からフォード車のオーナーも利用できるようにすると発表した。
業界幹部や投資家、バンカー、コンサルタントらによると、これによって競合他社とバイデン米政権は、両社と足並みをそろえるか、もしくは対抗する充電技術への投資を強化するかという難しい選択をつきつけられた。
SS&C・ALPSアドバイザーズの主席ETFストラテジスト、ポール・バイオッキ氏は「テスラがこの分野で先頭を走り、フォードがそれに乗ったことで、他の技術に投資してきた企業は方向転換が必要になるだろう。これはコストが高くつく問題だ」と語った。
SS&Cはチャージポイント・ホールディングスやEVゴー、ブリンク・チャージングなど、テスラとは異なる充電設備を手がける企業に投資している。
フォードとの合意は、他社よりも普及し信頼感もあるテスラの充電技術「NACS」にとって追い風になる。一方で、これに対抗する「CCS」技術を採用する中小企業は打撃を受けた。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、米国でEV販売台数第2位のフォードとの合意により、自社技術が北米標準となることを期待している。
ライバル社の多くは顧客サービスで遅れを取り、資金力も乏しい中で、テスラの充電設備網にも対応できるよう自社ネットワークを改良する必要に迫られる。
バイデン政権はコメント要請に答えなかった。ただブティジェッジ運輸長官はフォードとテスラの合意発表後にCNBCで、「どの規格が優勢になるかに関し、(政権が)勝者と敗者を決めることはない」と発言。最終的には業界が1つのシステムに収れんしていくとの見通しを示しつつ、テスラが開発したアダプターにより、当面は相互乗り入れが可能になると語った。
世界的なCCS推進団体であるCharlnは、テスラとフォードのような合意は「業界に不透明感をもたらし、投資の障害になる」との懸念を示した。
米政府は過去に、企業にCCSの採用を促す措置に75億ドルの連邦予算を付けている。気候変動対策として、2030年までに新車販売の半分をEVとする政策の一環だ。
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