EV急伸する中国市場、落日の日本勢は販売台数3割減 EV出遅れのツケ大きく価格競争でも「最大の敗者」
中国電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)の販売店。ロイター/Aly Song
世界最大の自動車市場、中国での日本車メーカーの販売減少が深刻だ。急速な電気自動車(EV)シフトにさらされ、日本勢の中国での乗用車販売台数は2023年1─3月累計で前年同期から3割以上落ち込んだ。ガソリン車でブランド力を維持してきた日本勢は苦戦し、三菱自動車はガソリン車の現地生産停止にまで追い込まれた。
日本勢は巻き返しを図るが、EVの普及スピードを読み誤ったツケは大きく、収益力のあるEV開発で、かつての地位を取り戻せるか見通せない。
S&Pグローバル・モビリティの西本正敏プリンシパルリサーチアナリストは、世界第2位の自動車市場である米国でも政府がEVの普及を進めようとしており、日本勢は「米国でも中国と同じように苦戦を強いられる可能性がある」とみている。世界2大自動車市場でシェアを失うことは日本勢にとって「非常にリスクだ」と指摘する。
ロイターが分析した各社発表と業界団体のデータによると、日本勢の今年1─3月の中国の新車販売台数は前年同期比32%減った。トヨタ自動車(高級車ブランド「レクサス」を含む)が14.5%減だったほか、日産自動車が約45%減、ホンダが38%減と大きく落とした。マツダ(約66%減)と三菱自(約58%減)は半分以下になった。
デンソーの松井靖経営役員は4月27日の決算会見で、取引先の日本車メーカーの中国での販売状況は「足元の計画に対して落ちている。計画の6割くらいのところもある。新車の在庫が多くなっている」と説明。別の部品メーカー幹部も「トヨタ、ホンダ、日産全てが計画割れで、問題になっている」と話した。
三菱自は昨年12月にクロスオーバーSUV(スポーツ多目的車)「アウトランダー」のガソリン車を中国で生産して投入したが、EV人気のあおりでガソリン車が振るわず、3月から5月まで同車の生産停止を決定。これを受けて、23年3月期の連結決算で特別損失105億円を計上する。
日本車はこれまで、ガソリン車の燃費や機能面での信頼性、ハイブリッド車(HV)の優位性などから人気を博してきた。だが、中国の乗用車市場は23年に新車販売の3台に1台がEVになるともいわれるほどEVシフトが進んでおり、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)を含む新エネルギー車(NEV)中心の中国自動車大手BYD、米EV専業テスラに日本勢は大きく水をあけられている。 日本車の存在感は実際、徐々に落ち始めている。中国での自動車販売台数全体に占める日本の自動車メーカーのシェアは、20年の24%から、23年1─3月には18.5%に低下した。日産の「シルフィ」は過去3年間、中国で最も売れていたセダンだったが、昨年末はBYDのPHV「宋」に抜かれて2位に転落した。