最新記事
景気

アメリカは景気後退へ向かうのか? 各地でフードバンクの需要40%以上増加

2023年5月1日(月)10時21分
ロイター

バージニア州ウィンチェスターの「ハイランド・フードパントリー」では、コロナ禍の最中、週90世帯程度に食料を配布していた。今月は約135世帯だった。新たな利用者の1人、ヘイウッド・ニューマンさん(47)は便利屋として働いているが、コロナ禍の間は支援に頼らずに切り抜けたものの、今は生活が苦しいと話す。

「水道代やゴミ処理代、電気代、車関係の出費や家賃もある。こういう業者は状況を考慮してくれない」とニューマンさんは言う。

綱渡りの食料確保

アトランタには、全米最大規模のフードバンク「アトランタ・コミュニティー・フードバンク」の倉庫が4エーカー(約1万6200平方メートル)の敷地に広がっている。供給担当ディレクターを務めるミシェル・グリア氏によれば、約500万ポンド(2300トン)の食料を保管できる設計だという。その大半が食品メーカーや食料品店から輸送用パレット単位で寄付される。だが、先月の在庫水準は平均180万ポンドにすぎなかったとグリア氏は言う。

到着した食料はあっというまに棚から消えていく。多くの場合は数時間以内に、末端の食料配給所から要請がある。グリア氏によれば、この倉庫が3月に受け取った食料は980万ポンド、配送したのは960万ポンドで、余裕はごくわずかだった。

シャローン・ホワイトさん(31)は不動産会社で時給約18ドルを稼ぐシングルマザーだ。今月、アトランタ地域の食料配給所を初めて訪れた。ホワイトさんによれば、託児所の料金や家賃、光熱費を払えば、食品やガソリン、不慮の支出に充てられるのは毎月約300ドルしかないという。

4月初め、ホワイトさんは古着を寄付するために地域住民センターを訪れ、食料配給所の案内に気づいた。「結果的に、非常に助かった」とホワイトさんは言う。

大半の地域フードバンクと同様、このアトランタのフードバンクも、政府予算によるプログラムや企業や生産者からの現物寄付に支えられて食料を確保。危機的な状況を除き、自己資金で食料を調達しないようにしている。アトランタでは企業や農家からの現物寄付はおおむね安定しており、フードバンクの記録によれば、配布した食料の半分以上を占めている。だが政府支出が占める比率は大きく変動している。

コロナ禍以前、このフードバンクが配布する食料の約27%は政府に支えられていた。コロナ禍の最中だった2021年度は、政府が44%近くを提供した。今年はわずか13%を占めるにすぎない。

アトランタ・コミュニティー・フードバンクのカイル・ウェイドCEOは、こうした変動分を補うため、今年度は手元資金のうち1800万ドルを使う予定だと話す。5年前、この慈善団体は地域で配布した食料のうち約5%を自己資金で購入していた。今年はその比率が25%になる。

「しばらくは何とかなる」とウェイドCEOは言う。「だが、いつまでも続けられるわけではない」

(John Shiffman記者、Leah Douglas記者 翻訳:エァクレーレン)


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

自動車
DEFENDERとの旅はついに沖縄へ! 山陽・山陰、東九州の歴史文化と大自然、そして沖縄の美しい海を探訪するロングトリップ
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中