最新記事
景気

アメリカは景気後退へ向かうのか? 各地でフードバンクの需要40%以上増加

2023年5月1日(月)10時21分
ロイター
全米最大規模の「アトランタ・コミュニティー・フードバンク」の倉庫

米国はリセッションへ向かっているのか。生活困窮者や福祉施設に食料を提供する国内最大のフードバンクの倉庫には不吉な兆候がある。写真は、全米最大規模の「アトランタ・コミュニティー・フードバンク」の倉庫。4月11日撮影(2023年 ロイター/Megan Varner)

米国はリセッションへ向かっているのか。エコノミストや投資家は、インフレ率や雇用、住宅、銀行その他の先行指標をかき集めて判断しようとしているが、生活困窮者や福祉施設に食料を提供する国内最大のフードバンクの倉庫には不吉な兆候がある。

非営利団体(NPO)「アトランタ・コミュニティー・フードバンク」の棚の半分以上は空っぽだ。幹部によれば、サプライチェーンの問題もあるが、食料支援の需要が新型コロナウイルスによるパンデミックの最中と同じくらい高いのが主な原因だという。今年、ジョージア州アトランタ地域で食料配給に頼る人の40%は、これまで配給を受けた経験がなかったという。

民間慈善団体であるこのフードバンクで最高財務責任者(CFO)を務めるデブラ・ショーフ氏は「誰も予想していなかった事態だ」と語る。同NPOは企業・個人からの寄付、さらには政府からの補助を受け、ジョージア州内の29郡で食料を配布。ショーフCFOは全米規模の慈善団体「フィーディング・アメリカ」でも財務運営委員会に参加しているが、米国中から同じような報告が上がっていると言う。「コロナ禍の頃の状況まで戻ってしまった」と同氏は話す。

新型コロナの影響が最も厳しかった時期より配給の需要が多い地域もある。オハイオ州中部の地元のフードバンクでは、支援を求める世帯数が昨年以降50%近く増大しているという。

米国勢調査局のデータによれば、4月前半に無料の食料配給を受けた世帯数は1140万戸以上で、前年同期に比べ15%増えている。

「フードバンクという活動が始まってから約50年がたつが、失業率が過去最低にもかかわらず、食料配給の需要は前例がないほど大きいという状況は、これが初めてだ」と語るのは、フィーディング・アメリカで最高政府交渉責任者を務めるビンス・ホール氏。同団体は、6万カ所の食料配給所を支援している。

配給への需要が続く一方で、コロナ禍に伴う政府の緊急支援の大半はすでに終了。特に、補助的栄養支援プログラム(SNAP)のコロナ対応緊急拡大措置が終わってしまったのは大きい。以前は低所得者向け食料購入補助制度(フードスタンプ)と呼ばれ、店舗での食料購入にそのまま使えるデビットカードが配布されていた。

インフレも大きな要因だ。米労働統計局によれば、パンデミックが始まった2020年3月以来、食品価格は23%上昇した。

ノースイースタン大学でフードバンク経営と公衆衛生を中心に研究しているジョン・ロウリー教授(経営学)は、感染の急拡大が終了した後も食料の無料配布に対する需要がこれだけ大きいことは「(経済にとって)良い兆候ではなく、恐らくリセッションが間近であることを示している」と語る。

「配給に頼るのは恥ずかしいなどと気にしていられない多くの初回利用者は、もはや店舗で食料を買う余裕すらなく、配給所のありがたさを実感している。この現実は、経済と消費者が健全かどうかを的確に示している」とロウリー教授は言う。

フィーディング・アメリカに関する研究で有名なベイラー大学のクレイグ・グンダーセン教授(経済学)は、パンデミック時以上の需要急増を経験しているフードバンクは珍しくないと語る。今年需要が増加するのが意外ではない理由として、コロナ禍の緊急事態において政府が非常に多くの支援を提供していたことを挙げる。またSNAPの給付についても、2021年の定期見直しにより上方修正されており、4年前よりも今の方が多い状態が続いていると指摘する。

「コロナ禍では景気対策としての給付金があったし、長期にわたって家賃の支払いが免除され、賃金以上の失業給付があった」とグンダーセン教授は言う。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ハンガリー、ICC脱退を表明 ネタニヤフ氏訪問受け

ワールド

ミャンマー地震、死者3000人超える、猛暑と雨で感

ビジネス

サントリーなど日本企業、米関税に対応へ 「インパク

ワールド

韓国、米関税で企業に緊急支援措置策定 米と交渉へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中