地球と社会に優しい「ESG重視経営」とは?
BE A TRUE ESG COMPANY
ILLUSTRATION BY DRAFTER123/ISTOCK
<社員と投資家と顧客がいま最も強く求められている、環境・社会・企業統治を重んじる企業経営について>
ビジネスの世界で今、ESG(環境・社会・企業統治)への関心がますます高まっている。SDGs(持続可能な開発目標)を達成するには、企業経営でもESGを意識して、地球を守り、社会を大切にし、好ましいルールに従うことが不可欠だ。
企業の評価基準としても、ESG関連の成果が財務成績に加えて重視されるようになった。近年はESGを基準にした企業ランキングも作成されていて、多くの有名企業が上位に名を連ねている。
しかしこのようなランキングは、企業の行動を正確に映し出しているとは言えないのかもしれない。研究によると、ランキングはしばしば厳密性を欠く。ESGの領域で約束したとおりの行動を取っていない企業も少なくない。
2020年の調査によれば、働き手の約90%は、自分の勤務先の会社にはダイバーシティ(多様性)があると述べている。ところがその一方で、自分が組織の一員として受け入れられておらず、排除されていると感じている人も約30%いた。
このように働き手の願望と企業の行動の間にギャップがあることのリスクは侮れない。働き手の業務上のパフォーマンスが低下したり、会社が投資家の支持を得にくくなったりするからだ。
社員と投資家と顧客が企業に倫理的な行動を求める時代にあって、企業は今、大きな問いに直面している。それは、ESGに関する約束を守り、利益の創出と社会貢献を両立するにはどうすればいいのか、という問いだ。
もっとも、責任感ある企業は昔から、今日で言うところのESG重視の行動を取ってきた。リサイクルを実践したり、給料の決定を平等に行ったりしていたのだ。
私は「ESG」という言葉を初めて聞いたとき、その意味が分からず、調べてみた。すると、福利厚生の充実、良好な労働環境の確保、地域社会への貢献などを指すという。
これらは、私が経営者として既に自社で実践していたことに思えた。大きな成功を収めている企業経営者たちは、社員の健康と安全を重んじるなど、ESG志向の行動を以前から取っている。そこに、地球環境やダイバーシティなどの新しい課題が加わったにすぎない。
ただし昔と違うのは、ESGという新しい枠組みが登場したことの効果だ。企業がどのような行動を取るべきかという指針が生まれ、誰もがそうした行動を取る責任を課されるようになったのである。