コンサル・監査あまりの時代が到来 マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれたワケ
業務効率化でコンサルティング依頼は急増したが...
そうした新しい業務運営の在り方を確立し、実際のマネジメント手法を組織に浸透させるために、マッキンゼーやアクセンチュアへのコンサルティング依頼は急増した。
コンサルティング各社は、顧客企業が新しい分野に進出し、いち早く安定した業務の運営体制を確立するために必要な方法論を提供して対価を得る。具体的にマッキンゼーなどは、経営戦略や財務、管理会計の理論を結合することによって、効率的に業務運営を行う標準的な手法を確立した。
そうしたサービスを利用することによって、IT関連分野の企業は、データの利用など自社の強みがより発揮できる分野に集中しやすくなった。コンサル業界でのリストラ増加は、IT先端分野での企業の成長性が低下していることを意味する。そうした変化を機敏に感じとり、早い段階でIT先端企業を去った人もいる。
コンサル出身のサンドバーグ氏はいち早くメタを去った
その一人として、2022年6月、シェリル・サンドバーグ女史はメタの最高執行責任者(COO)を辞すと表明した。それは、メタなどの成長の勢いが弱まり、新たな成長分野を探さなければならないという認識に基づいた意思決定だったように見える。ハーバード・ビジネス・スクールを修了した後、サンドバーグ女史はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた。グーグルなどを経て、2008年、COOとしてサンドバーグ女史はフェイスブックに参画した。
メタ創業者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)にとって、経営コンサルタントとしてのスキル、グーグルでの広告ビジネスの高い成長を支えたサンドバーグ女史の実力は、SNS分野でのビジネスモデルを確立し、高い成長を実現するために喉から手が出るほど欲しかった要素だったはずだ。
このようにして、多くのIT先端企業は、コンサル業界出身の人材採用を強化した。また、アクセンチュアやソフトウエア分野への選択と集中を進めたIBMなどに、ビジネスモデルの確立や、新規事業の業務運営体制の企画、マネジメント手法などのコンサルティングを委託する企業も増えた。
その結果、世界的にコンサルタント人材の求人は急増した。一部では、組織運営などに関する理論に加え、人工知能(AI)やネットワーク・テクノロジーに精通した人材の争奪戦に拍車がかかった。
ビジネスモデルの行き詰まりを鮮明に理解している
しかし、高い成長がいつまでも続くことは考えづらい。2021年の秋ごろから、徐々にメタをはじめとするIT有力企業の成長鈍化懸念は高まった。株価も下落し始めた。
2022年3月に連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを開始し、その後は急激に金融が引き締められた。世界全体で企業の資金調達などのコストも増加した。スタートアップ企業とGAFAなどの競争も激化した。SNSやサブスク型のビジネスモデルの優位性は行き詰まり、業績懸念は追加的に高まっている。
2023年2月には、ユーチューブのスーザン・ウォジスキーCEOの退任も発表された。ウォジスキー女史もベイン・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとしてキャリアを積み、その上でグーグルに参画した。コンサルタントとして多くの企業を見てきた経験があるだけに、彼女らはビジネスモデルの行き詰まりをより鮮明に理解しているはずだ。