EU、敵に塩を送っている? 実は輸入量が増加、ロシア産LNGの禁輸は可能か
リベラ氏はロイターの取材に対し、「制裁パッケージの一環として位置付けるべきだと考えている。さもなければ、きわめて馬鹿げた状況になる」と語った。
「総量としてはそれほど多くないというのは事実だ。とはいえ、なぜロシア産LNGの輸入をまだ続けているのかという説明は容易ではないと思う」
全加盟国の同意が必要となる制裁の承認は政治的なハードルが高いため、EUの一部では別の選択肢を模索する動きがある。
先週には、複数のEU加盟国が連名で、ロシア企業が欧州向けLNG輸出に必要なインフラ設備の利用を予約することを停止できるようにする法律上の選択肢をEUとして設けることを提案した。
この提案は、EUの天然ガス市場に関する幅広いルールを含む法案の一部であり、欧州議会との協議が必須となる。欧州議会はさらに踏み込んだ措置を求めており、ロシア産天然ガスのEUへの輸入を実質的に全面禁止することを提案している。
「前例のない時代には、前例のない対応が求められる」と語るのは、欧州議会でこの法案の代表提案者となっているイェジ・ブゼク元ポーランド首相。ブゼク氏は、この提案はロシア産化石燃料への依存に終止符を打つというEUの戦略に沿ったものだと話している。
実務上、国際法上の課題も
だがEU当局者の一部は、欧州議会の提案が加盟国からの政治的支持を得られる可能性はきわめて低いと話しており、理由の一端として、法律上の困難を挙げる。
ベイカー・マッキンジー法律事務所でエネルギー関連の上級顧問を務めるクラウスディーター・ボーチャート氏によれば、世界貿易機構(WTO)のルールが認めているのは、各国がある限定された条件の下で特定の製品を自国市場から排除することだけだという。
ボーチャート氏は欧州議会の提案について、「個人的には、今回のような案が、こうしたWTOの無差別原則と整合するのか疑問を抱いている」と語る。同氏は以前、欧州委員会エネルギー局の幹部の立場にあった。
オランダのロブ・イェッテン・エネルギー相は、一部の国では、LNG輸入の即時停止に対応できるほど供給源するのが不可能という実務上の困難がある、とロイターに語った。
イェッテン氏はロシア産LNGに対する制裁の見込みについて、「一部のEU加盟国にとって、これはやりすぎと言うことになろう」と語る。
オランダはウクライナ侵攻開始以来、パイプライン経由でのロシア産天然ガスの輸入を全廃した。LNG輸入については、減らしているもののゼロにはなっていない。