最新記事
エネルギー

EU、敵に塩を送っている? 実は輸入量が増加、ロシア産LNGの禁輸は可能か

2023年4月17日(月)12時36分
ロイター

傷を負うのは誰か

ロシア産LNG輸入の停止は両刃の剣だとアナリストらは言う。

キャプラビューのアナリスト、タミル・ドゥルズ氏は、輸入停止によって欧州での天然ガス価格は上昇するが、必ずしもロシアの輸出収益が減るとは限らない、と言う。LNGであれば、対ロシア制裁を科していないアジア市場などに輸出先を変更することは簡単だからだ。

「実質的にロシアに滞留しているパイプライン経由のガス輸出と異なり、ロシア産天然ガスについて、ロシアの輸出収益やグローバル天然ガス市場の依存度を低下させることははるかに難しいだろう」とドゥルズ氏は語る。

また、タンカー間の積み替えを考えれば、他国から運ばれてくるLNGについてロシア産が含まれていないと判定することは難しく、禁輸措置の執行にも課題が残る。

EU外交担当者の中には、たとえば欧州ではLNGがロシア産でないことを証明する文書の提示が義務付けられ、他地域の市場ではそうした証明が求められないとすれば、サプライヤーが欧州向けのLNG出荷に二の足を踏むのではないかという懸念が見られる。

このところLNG市場での需給は逼迫(ひっぱく)しているため、一部のアナリストは、欧州がロシア産LNGの代替を探そうとしても容易ではなく、そのギャップを埋められなければガス不足の恐れが生じると話している。

コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターの研究者アンヌゾフィー・コルボー氏は、「制裁の基本は、制裁の対象とする国より深い傷を自国が負わないようにすることだ」と語る。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中