最新記事
トラベル

ゼロコロナ終了でも中国人観光客戻らぬオーストラリア 団体旅行認定されず打撃

2023年4月17日(月)12時05分
ロイター

ニューカッスル大学ビジネススクールの講師、ポール・ストルク氏は「悪化している地政学的状況や貿易などに関係しているのは間違いない。現在の状況と、それらを切り離すことはできない」と話した。

ストルク氏によると、中国人は家族の留学先を旅行先に選ぶことが多いという事情もある。2019年までは、オーストラリアが受け入れる外国人留学生の中で最も多いのが中国人だったが、21年にオーストラリアが国境を再開した後、他の国籍の留学生がその穴を埋めてしまった。

人材の供給制約

業界関係者によると、オーストラリアの観光産業は外国語を話すガイドのほか、バスの運転手など必要不可欠な働き手の不足によっても制約を受けている。コロナ禍で観光業が落ち込んだのに続き、失業率が数十年ぶりの低さとなり、人材が他の分野に奪われたからだ。

オーストラリア観光輸出協会のピーター・シェリー専務理事は「観光に精通した優秀なスタッフが、大量に失われた」と述べた。

「(中国人は)長い間旅行に行けなかったので、旅行が待ち遠しいという声を聞く。そして、オーストラリアは常にぜひ行きたい旅行先の一つに挙げられているのだが、(肝心の)観光客にサービスする能力が低下している」という。

オーストラリアを個人旅行している何人かの中国人はロイターに、宿泊施設やツアーを手配してくれる親戚がオーストラリアにおり、言葉の壁などを回避できるため訪れたと説明した。

一方、インドからオーストラリアへの旅行者は昨年、2019年の80%水準に戻り、同国において現在4番目に大きい海外からの旅行客層となっている。

中国人観光客とホテルやクルーズ船をつなぐイージー・ゴーイング・トラベル・サービシズ(パース)のディレクター、ジョニー・ニー氏は、同社の提携組織は国内旅行者に対応することで中国人観光客が減った分の不足を補っていると説明。「中国人観光客が一斉に戻ってくると、需要に供給が追いつかなくなるのではと心配だ」と語った。

(Stella Qiu記者、 Byron Kaye記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿

ワールド

米、LNG輸出巡る規則撤廃 前政権の「認可後7年以
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中