ゼロコロナ終了でも中国人観光客戻らぬオーストラリア 団体旅行認定されず打撃
ニューカッスル大学ビジネススクールの講師、ポール・ストルク氏は「悪化している地政学的状況や貿易などに関係しているのは間違いない。現在の状況と、それらを切り離すことはできない」と話した。
ストルク氏によると、中国人は家族の留学先を旅行先に選ぶことが多いという事情もある。2019年までは、オーストラリアが受け入れる外国人留学生の中で最も多いのが中国人だったが、21年にオーストラリアが国境を再開した後、他の国籍の留学生がその穴を埋めてしまった。
人材の供給制約
業界関係者によると、オーストラリアの観光産業は外国語を話すガイドのほか、バスの運転手など必要不可欠な働き手の不足によっても制約を受けている。コロナ禍で観光業が落ち込んだのに続き、失業率が数十年ぶりの低さとなり、人材が他の分野に奪われたからだ。
オーストラリア観光輸出協会のピーター・シェリー専務理事は「観光に精通した優秀なスタッフが、大量に失われた」と述べた。
「(中国人は)長い間旅行に行けなかったので、旅行が待ち遠しいという声を聞く。そして、オーストラリアは常にぜひ行きたい旅行先の一つに挙げられているのだが、(肝心の)観光客にサービスする能力が低下している」という。
オーストラリアを個人旅行している何人かの中国人はロイターに、宿泊施設やツアーを手配してくれる親戚がオーストラリアにおり、言葉の壁などを回避できるため訪れたと説明した。
一方、インドからオーストラリアへの旅行者は昨年、2019年の80%水準に戻り、同国において現在4番目に大きい海外からの旅行客層となっている。
中国人観光客とホテルやクルーズ船をつなぐイージー・ゴーイング・トラベル・サービシズ(パース)のディレクター、ジョニー・ニー氏は、同社の提携組織は国内旅行者に対応することで中国人観光客が減った分の不足を補っていると説明。「中国人観光客が一斉に戻ってくると、需要に供給が追いつかなくなるのではと心配だ」と語った。
(Stella Qiu記者、 Byron Kaye記者)
