GWスタート 日本人観光客でにぎわう韓国旅行業界が抱える3つの課題とは
"安・近・短"の韓国旅行に変化が
日本人観光客で活気を取り戻しつつある韓国旅行業界は3つの問題を抱えている。物価高と円安、人材不足だ。
2023年1月―3月の訪日韓国人は2019年の同期間の76.9%まで回復したが、訪韓日本人の回復率は45.4%にとどまっている。多くの日本人にとって韓国は"安・近・短"の旅行地だ。ところがその韓国の物価高に円安が相まって韓国旅行が高額化しているのだ。
人材不足も深刻だ。観光鎖国の期間中、日本政府がGO TOキャンペーンを実施するなど、政府や自治体が、国内観光を支援する施策を行なってきた。
他方、韓国は国内旅行を制限した。そのため文在寅前政権が日本人の韓国入国を規制した2020年3月以降、日本人旅行者に依存してきたホテルや免税店、観光施設が休業や廃業に追い込まれた。休業による無給休暇や廃業で失業した人たちは、外部環境に左右される観光業界を嫌っているという。
人材不足は、ホテルや免税店から旅行会社、さらには航空会社にも広がっている。人材を確保するため、関連企業はコロナ禍前と比べて30%から40%高い年俸を提示し、残業を増やして対応している。人件費の高騰や割増の残業代は価格に転嫁される。
コロナ・パンデミックに対応する余力もなく......
日本の旅行業界は国内旅行に依存してきたが、ソウルの旅行業界は海外旅行者、なかでも日本人旅行者に依存してきた。それに加えて、コロナ・パンデミックの影響を最小限に抑える施策の有無が、来訪外国人旅行者の回復で明暗を分ける一因となっている。
ソウルのホテル関係者はHISグループの「変なホテルソウル明洞」に羨望の眼差しを向けているという。「変なホテル」はチェックイン手続きやアメニティの追加などをAIロボットが行う非対面型のホテルで、多くのスタッフを必要としないことから人材不足の影響はほとんどない。
「変なホテル」は当初から非対面式だが、コロナ・パンデミックで疲弊した対面式ホテルが非対面に改装する資金はなく、残業を増やして対応するほかないという。
前述のホテル国都の副支配人は、コロナ禍前と比べて韓国人宿泊者が増えたと話す。コロナ禍以前、同ホテルの宿泊者はほとんどが外国人で、韓国人は5〜6%程度だった。
韓国人の宿泊を伴う観光は、日本や中国、東南アジアなどの海外旅行や国内リゾートが中心で、ソウルなどの首都圏は日帰り旅行が多かったが、現在、安心して旅行ができる海外は日本くらいで、日本旅行を断念した人たちが、宿泊を伴う首都圏観光を行っているとみられている。