「無意識的な偏見」が、社会の活力と成長を阻害する...企業が多様性を推進する理由
「多様性を認めようという世の中になっている中で、社会で男女が活躍できる機会はまだまだ平等ではないし、賃金の格差も無くなりません。そうした問題の背景にあるアンコンシャス・バイアスを排除するため、当社では全世界の社員に向けて外部の専門家と連携した研修を行い、性別や特性に関わらず優れたパフォーマンスをした人がきちんと評価される人事制度の確立を進めています」
DE&Iを実現するため、アメックスが行っている投資は約40億ドル。社内外の環境整備に同社がそれだけの投資をする理由を、津釜氏は「社会に対してポジティブなメッセージを発信する役割を担うため」と説明する。
世界180カ国以上でクレジットカード事業やペイメントサービスを展開する同社は、ビジネスを通じて多くの企業や消費者とのタッチポイントを持っているため、社会をより良い方向に変える影響力も発揮できる。そこで、社会や組織のあるべき姿を自社が率先して示すことで、それがポジティブなメッセージとして社会に広く伝わると考えているのだ。
挑戦する女性起業家たちの課題を埋める試み
さらにアメックスは、より多様で公正な社会の実現を目指して、社外への直接的な取り組みも始めている。その1つに、グローバルでは2010年から続く「ショップスモール」がある。もともとはリーマンショックによる経済の低迷を背景に、「街のお店(=スモールショップ)」の支援を通じて地域の活性化を目指す活動としてアメリカでスタート。その後に世界各国へと活動が広がり、日本では2017年から加盟店でのキャンペーンなどを展開する取り組みが始まった。
そして2022年には「ライズ・ウィズ・ショップスモール」を初開催した。これはスモールショップのオーナーが直面する課題の解決や、新たな挑戦を支援することで、街全体の活性化と多様化を後押しすることを目指した参加型企画だ。
初回となった今年は、女性ショップオーナーにフォーカスし、全国の応募者から13名を選出。上限200万円の特別支援金、または先輩女性経営者をメンターとする課題解決に向けたアドバイスを約2カ月間にわたり提供するプログラムが実施された。アメックスの独自調査で明らかになった、「経営ノウハウや情報発信術の不足」という女性ショップオーナーの課題に着目して生まれた日本独自の支援プログラムだ。
11月24日には、アメリカン・エキスプレス東京オフィスにおいて授賞式を実施。同プログラムの企画・運営を担当した津釜氏が13名の受賞者一人ひとりに表彰状を手渡し、その後はそれぞれのショップの紹介や起業に至ったストーリーなどが受賞者から語られた。