最新記事
ビジネス

ビジネス人生はRPG どんなに経済が不安定でも生き残れる最強の職種とは?

2022年10月29日(土)15時32分
越川慎司(株式会社クロスリバー代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

複数の巨大IT企業を股にかけるスペシャリスト

彼は英語があまり得意ではありませんでしたが、過去の経験をもとにしたプレゼンテーションは多くの人を魅了し、次々に重要事項を決定へと促していました。私も負けじと英語で議論に参加しましたが、何度も彼に論破されてしまいました。

落ち込んで宿泊先のホテルに帰ろうとしたところ、突然、彼が私に「一杯飲みに行かないか? その代わり、君のおごりだぞ(笑)」と声をかけてくれたのです。

アルコールを飲めない私はそうした誘いを受けることが少ないのですが、彼自身に興味があったので、オフィス近くのレストランに飲みに行くことにしました。直後に日本とのオンライン会議が入っていたため、「1時間だけ」と決めて。

飲み始めるやいなや、彼は「面白いものを見せてやる」と言って、複数の会社の入館証を見せてくれました。マイクロソフトのみならず、他の著名なIT企業も含め、実に4つのプロジェクトに参画していたのです。

さらに驚かされたのは、データセンターに関することだけでなく、オンラインサービスやワインの輸出に関する企画など、多種多様なプロジェクトに参画していたことでした。

「アグリゲーター」という理想の職種

「名刺も複数持っているの?」と私が聞くと、「これしかない」と言って1枚の名刺を見せてくれました。そこに書かれていた肩書は「アグリゲーター」というものでした。

「アグリゲーター」とは、人・モノ・情報を瞬時に組み合わせてクライアント企業の課題を解決する新しい職種や働き方のことです。

要素を組み合わせて解決する能力

『29歳の教科書』2000年前後のITバブルでは、「デザイナー」と呼ばれる職種が開発者とビジネス専門家の間に入って、多くのビジネスを創り出していました。アグリゲーターはそこからさらに進化した職種で、さまざまな業界の人を巻き込んでプロジェクトを推進する役目を担っていました。

このアグリゲーターこそ、当時の私がぼんやり考えていた理想の職種でした。

いま振り返れば、この「要素を組み合わせて解決する能力」こそ、これからの時代の、垣根のないオープンワールドを生き抜くために必要になる、と確信した瞬間でした。

オープンワールドのまったく新しい働き方

こうして私は、限られた時間で成果を出し続ける働き方、そして、「アグリゲーター」という新たな職種にトライするべく起業を決めました。

マイクロソフトを卒業した翌日にクロスリバーという法人を立ち上げ、全メンバーが週休3日で週30時間稼働、完全リモートワーク、副業(複業)しないと入れず、そして、睡眠時間は毎日7時間というアグリゲーター集団を結成しました。

オープンワールドで、まったく新しい働き方の実験を継続するべく、みずから実行に移したのです。

越川慎司(こしかわ・しんじ)

株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IMF、経済成長予測を大幅に下方修正へ 世界的な景

ビジネス

午前の日経平均は続伸、個別物色広がる 買い戻し中心

ワールド

トランプ氏、米政府職員の採用凍結延長へ 7月まで

ワールド

ウクライナ中銀、金利据え置き 25年成長率予想を3
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中