最新記事

日本経済

生活保護が増加する一方で1.2億円タワマンが即完売 日本列島一億総下流社会への序章

2022年9月30日(金)14時00分
須田慎一郎(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

1億総中流という幻想はもはや通用しない時代に突入した 1001nights / iStockphoto


日本人の生活はますます二極化している。経済ジャーナリストの須田慎一郎さんは「ホームレスや生活保護受給者が増加する一方、富める者がより富む現象が起きている。『成長と分配』と岸田文雄首相は言っているが、ほとんど『絵に描いた餅』だ。以前ならどうにか太刀打ちできた中間層も、手をこまねいているうちに貧困層に陥る可能性すら出てくる」という――。

※本稿は、須田慎一郎『一億総下流社会』(MdN新書)の一部を再編集したものです。

極限まで進んだ「二極化」

都内で次々と建てられている超高級マンションを見ていると、「これほどまでに貧富の差は拡大しているのか」としか思えない現実にぶち当たる。

東京・渋谷区の北参道。わかりやすくいえば、代々木駅から徒歩5、6分、明治神宮の北参道口に隣接するエリアでは、大規模なマンション開発が進んでいる。まだ完成していない27階建てのマンションの販売価格を見ると、驚かされる。

ここで読者のみなさんに質問してみたい。

立地は超一等地だが、低層階で面積は40平方メートルに満たない、L(リビング)がない1DKの部屋。間取り図を見ると、ベッドルームに窓も見当たらない、この部屋の値段はいくらだろうか?

答えは、なんと1億2000万円以上! 首都圏のマンションの平均価格がすでにあのバブル期超えをしているとはいえ、にわかには信じ難い高値だろう。

驚くのは、それだけ高額なマンションが発売直後に完売するほどの売れ行きだということである。思わず、「高いにもほどがある」といいたくなる金額である。

中間層も手をこまねいているうちに貧困層に陥る可能性

なぜ、こんなに高くても飛ぶように売れるのか──。背景にあるのは、2013年に始まった日銀の大規模な金融緩和である。とにかく景気回復を最優先するために、この9年間、日銀はゼロ金利どころか、マイナス金利にまで踏み込んで、お金をばらまいてきた。

正確にいえば、「インフレ率2%」という目標を掲げ、そこに向けてお金をじゃぶじゃぶ溢れさせることで、賃金上昇を伴う物価上昇を目指してきたわけだ。

ただ、実際には、本当にお金が必要なところにまでお金は行き渡らず、もともとお金を持っている富裕層がよりお金を増やせる機会が与えられた。それが不動産にも流れ込み、1980年代後半のバブルのピークを超えるほどの「不動産バブル」につながっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中