最新記事

日本経済

生活保護が増加する一方で1.2億円タワマンが即完売 日本列島一億総下流社会への序章

2022年9月30日(金)14時00分
須田慎一郎(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって、日本の木造住宅にも用いられるロシア産の木材などの輸入が滞り、資材価格も高騰。不動産価格はかつてない水準まで膨らんでいる。そうしたなか、都心部の麹町などでも大規模なマンション開発が進み、不動産バブルに拍車をかけている格好だ。

今日住む家が見つからないホームレスや生活保護受給者が増加するのとは対照的に、富める者がより富む「二極化」は、まさに極限まで進んでいる。そうなると、以前ならそのような状況にもどうにか太刀打ちできた中間層も、手をこまねいているうちに貧困層に陥る可能性すら出てくるに違いない。

つまり、インフレで資源や食料はもちろん不動産価格までもが上昇する、大きな流れにありつけない日本人がますます増える可能性が高まっているのだ。

韓国に抜かれた日本はますます「貧しい国」に

かつて「一億総中流社会」といわれ、大多数を占めていたはずの中間層が、いまや実質的に貧困層にこぼれ落ちているような現象が広がっている。その一方で、富める者はより富み、一握りの超富裕層と大多数の貧困層に二分される「二極化」の格差は広がるばかり。

このままでいけば、「一億総下流社会」になる恐れすら高まっている。

それにしても、なぜここまで日本は貧しい国になったのか。一言でいえば、収入が増えていないからにほかならない。OECD(経済協力開発機構)が算出する主要7カ国(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)に韓国を加えた平均実質賃金の推移を見ると、日本だけが低いままであることが一目瞭然だ。

「一億総下流社会」

出典=『一億総下流社会

米国は2000年から伸び続け、2020年時点の実質賃金は7万ドルに迫る勢いで突出している。一方で、日本は2015年には韓国にも抜かれ、2020年にはコロナの影響でイタリアが最下位になったものの、それまではイタリアよりも低い賃金だった。

まして米国を筆頭に、カナダ、ドイツ、英国、フランス、そして韓国も右肩上がりで伸びているのに、日本とイタリアだけがこの20年間、賃金が増えていないのである。

しかも、賃金が増えていないのは、この20年間だけではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が

ビジネス

カナダ、63億加ドルの物価高対策発表 25年総選挙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中