最新記事

自動車

マツダ新型SUV「CX-60」はBMWを超えたか パワーと燃費の両立は高級ドイツ車を凌駕

2022年7月9日(土)15時05分
山崎 明(やまざき・あきら) *PRESIDENT Onlineからの転載

マツダは大排気量の余裕を生かして、リーンバーン領域を大きく拡大、出力あたりの燃料消費率を大きく下げることに成功したのだ。さらにディーゼルエンジンの欠点であるNOx排出量の大幅低下も実現している。

特にマイルドバイブリッドモデルでは、効率の低下する低負荷領域は電気モーターに任せることで全域での高効率化を図り、燃費に不利な4WDモデルであるにもかかわらずWLTCモードで21.1km/lという素晴らしい値を実現している。マイルドハイブリッド非搭載でも18.5km/lという数字だ(4WDモデルの場合。2WDは19.8km/l)。

これがどれほどすごいかというと、ボディサイズの近いBMW X3 20d(2000cc)の14.5km/l、M40d(3000cc)の13.8km/lと比較すれば一目瞭然だ。メルセデスベンツGLC 220d(2000cc)も15.1km/lである。

1500ccエンジンのマツダ2並みの燃費か

さらにすごいのは、身内のCX-5 XD(2200cc、4WD)の16.6km/lさえ大きくしのぐのだ。CX-5どころか、1800ccのCX-30 XDの18.7km/lやマツダのSUVで一番小さいCX-3 XDの19.0km/lさえ上回っているのである(どちらも4WDの数字)。

1500ccエンジンを搭載するマツダ2の2輪駆動モデルの21.6km/lに近い水準なのだ。

ディーゼルエンジン以外に目を向けると、ハリアーハイブリッドのE-Fourモデル(2500ccガソリンエンジン+ハイブリッド)の21.6km/lにも迫る値で、しかもハリアーよりパワフルだ(ハリアーのシステム最高出力は222馬力)。

軽油はガソリンよりも安いため、ハリアーハイブリッドより経済的かもしれない。

自社開発・自社製造のトランスミッション

エンジンだけではない。トランスミッションもなんと自社開発・自社製造という新しい8速オートマチックトランスミッションを搭載している(CX-5は6速)。これがまた通常の8速オートマチックトランスミッションとは異なるユニークな特徴をもっている。

通常オートマチックトランスミッションはトルクコンバーターという流体を使った機構を用いるが、CX-60にはこのトルクコンバーターがなく、電子制御の湿式多板クラッチを用いている。

ツインクラッチ式のトランスミッションでは採用例が多いが、通常のオートマチックトランスミッションでこの方式を採用しているのは、私の知る限りメルセデスベンツAMGの高性能モデルだけである。

この方式は駆動のダイレクト感が増し、キレのある加速を楽しめるが、発進時や変速時の快適性はやや犠牲になる。それを緻密な制御によって快適性も担保しているという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中