最新記事

自動車

マツダ新型SUV「CX-60」はBMWを超えたか パワーと燃費の両立は高級ドイツ車を凌駕

2022年7月9日(土)15時05分
山崎 明(やまざき・あきら) *PRESIDENT Onlineからの転載

FRのベネフィットは操舵輪と駆動輪が別々のため操舵感に優れ、後輪を駆動するため前後の重量配分を均等にでき(FF車は駆動力を伝えるために前輪に大きな荷重をかけざるを得ない)、バランスの取れた操縦性と乗り心地を実現できる。

しかしFRはスペース効率的に不利で、コストもかかることからマスブランドで採用しているメーカーは限られる。マツダはより良い走り味を追求してあえてFRを採用したのだ。

ロードスターと同形式のサスペンション

さらにサスペンションにはフロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクという、高性能ではあるがコストのかかる形式を採用している。

特にフロントサスペンションにダブルウィッシュボーンを採用している車種は非常に少なく、BMWは5シリーズ以上、メルセデスベンツもCクラス以上で採用しているにすぎない。

マツダ的にはロードスターと同じ形式のサスペンションをCX-60に装備したことになる。SUVであることを考えれば過分にも思えるが、マツダの担当者によれば、それによりロードスターにも通じる軽快なハンドリングを実現したという。

シャーシだけでなく、エンジンもプレミアム感あふれるものが搭載されている。通常の4気筒ガソリンエンジン搭載車もラインアップされているが、注目は直列6気筒ディーゼルエンジンとPHEVモデルだ。

ユニークな直列6気筒ディーゼルエンジン

日本仕様のPHEVモデルについてはまだ詳細が発表されていないので、直列6気筒ディーゼルモデルについて分析してみたい。直列6気筒は理論的に完璧なバランスの取れた理想的なエンジンなのだが、長さが長くなるためFF車には搭載しづらい。

「マツダがBMWを超える日」ほとんどの車がFFになってしまった現在、乗用車用の直列6気筒エンジンを量産しているメーカーはBMW、メルセデスベンツ、ジャガーランドローバーのプレミアムブランド3社のみにとどまる。

この新しいマツダのエンジンは単に直列6気筒エンジンだというにとどまらないユニークな特徴がある。このエンジンは3300ccとかなり大きな排気量をもっている。通常、排気量が大きくなるとパワーは大きくなるが燃費は悪くなるというのが常識だ。

もちろん、CX-5に搭載されている2200ccのエンジンよりパワーは大きい。CX-5の190馬力に対して254馬力(マイルドハイブリッド仕様の場合。通常モデルは231馬力)となっている。しかし排気量が1.5倍になっているほどの出力向上ではない。

BMW X3の場合2000ccディーゼルは190馬力なのに対して3000ccディーゼルは286~340馬力となっているので、3300ccとしては控えめな出力である。

大排気量を生かして低燃費を実現する「常識外れの試み」

いたずらにハイパワーを追わない姿勢は最近のマツダらしいが、これにはきちんと理由がある。マツダは大排気量を生かしてかえって低燃費を実現する、という常識外れのパラドックスに挑んでいるのである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中