マツダ新型SUV「CX-60」はBMWを超えたか パワーと燃費の両立は高級ドイツ車を凌駕
これは「コスパ最高」か
最後に、驚くべきは価格だ。この3300cc、6気筒ディーゼルエンジンを搭載したモデルは323万9500円から買えるのである。CX-5のディーゼルモデルは299万7500円からだから、24万2000円しか差がない。CX-5の販売に影響が出るのではと心配になるくらいだ。
もちろん、マイルドハイブリッド仕様は装備や内装が大きくアップグレードされることもあり約500万~550万円となっており、CX-5の最上位モデルとの差は100万円以上と大きくはなるのだが。
一方で上位モデルの内装の質感は非常に高く、BMWやメルセデスベンツから乗り換えても全く不満は感じられないレベルにある。BMW X3の6気筒ディーゼルモデルは931万円もするし、4気筒モデルでも741万円だ。
メルセデスベンツGLCには6気筒ディーゼルモデルはなく、4気筒で768万円だ。装備もCX-60のほうが圧倒的に充実しており、CX-60の6気筒ディーゼルモデルのお買い得感はすさまじいものがある。
FR採用で次のステージに進む可能性......
価格だけでなく維持費の安さ(定期点検や部品交換にかかるコストは日本車のほうがかなり安い)や利便性(点検にかかる時間は日本車のほうが圧倒的に短い)も考えると、このCX-60はドイツプレミアムブランドからの乗り換えもかなり多くなるのではと思われる。とにかく質的に今までのマツダ車のレベルを大きく超えた1台なのだから。
マツダがプレミアムブランドに向かって大きな一歩となりそうなこのモデル、発売は今年9月である。今から試乗できる日が待ち遠しくてならない。
今後、このFRプラットフォームを採用したモデルが次々と登場するだろう。願わくは、日本では少々手に余る大型車だけでなく、純粋にドライビングプレジャーを満喫できるマツダ3クラスのコンパクトモデルもFR化してほしいところだ。
もしコンパクトモデルにもFRを採用するようになったら、本当にマツダはBMWと並ぶ、もしくは超えるドライビングプレジャーをもつブランドに成長するかもしれない。
山崎 明(やまざき・あきら)
マーケティング/ブランディングコンサルタント
1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。戦略プランナーとして30年以上にわたってトヨタ、レクサス、ソニー、BMW、MINIのマーケティング戦略やコミュニケーション戦略などに深く関わる。1988~89年、スイスのIMI(現IMD)のMBAコースに留学。フロンテッジ(ソニーと電通の合弁会社)出向を経て2017年独立。プライベートでは生粋の自動車マニアであり、保有した車は30台以上で、ドイツ車とフランス車が大半を占める。40代から子供の頃から憧れだったポルシェオーナーになり、911カレラ3.2からボクスターGTSまで保有した。しかしながら最近は、マツダのパワーに頼らずに運転の楽しさを追求する車作りに共感し、マツダオーナーに転じる。現在は最新のマツダ・ロードスターと旧型BMW 118dを愛用中。著書には『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)がある。日本自動車ジャーナリスト協会会員。