セブン-イレブン「加盟店の乱」の影で一変した本部の態度 業界全体でも時短営業が拡大
訴訟を起こした元オーナーは契約解除後も独自に営業を継続した一方、セブン-イレブン側は駐車場だった敷地にプレハブの仮設店舗(写真)を建設、営業を開始して対抗した(東洋経済編集部撮影)
「あれがすべてのきっかけだった」。あるコンビニ大手の幹部は、業界をめぐる昨今の動きをそう振り返る。
24時間営業を取りやめたセブン-イレブンの元加盟店オーナーに対する、フランチャイズ(FC)契約解除の正当性が争われた訴訟。6月23日の大阪地裁判決は、セブン-イレブン・ジャパンの主張通り、契約解除は有効だと認めた。
舞台となったのは、大阪府東大阪市にある「セブン-イレブン東大阪南上小阪店」。同店オーナーだった松本実敏氏は2019年、人手不足などを理由に、セブンとの間で書面での合意がないまま24時間営業から時短営業へと切り替えた。
一方のセブン側は2019年末、顧客への乱暴な言動などを理由に松本氏との契約を解除し、2020年1月には店舗の明け渡しを求めて提訴。これについて松本氏は24時間営業をやめたことへの報復だとして、契約解除の無効を求める訴訟を起こして泥沼化していた。
世論や国の動きに焦ったコンビニ本部
1審の結果は、セブン側の全面勝訴(元オーナー側は控訴)。判決では、実際に顧客対応に問題があったと認め、契約解除は有効だとの判断を示した。地裁判決について、愛知大学法学部の木村義和教授は「加盟店の立場が圧倒的に弱い現実を切り捨ててしまっている。大阪地裁はもう少し実態に理解を示してほしかった」と指摘する。
ただ、1人のオーナーによる反乱がコンビニ業界に与えた影響は大きかった。「ニュースが大きくなったことで、無視できなくなった経済産業省や公正取引委員会も動いた」(冒頭のコンビニ大手幹部)。
社会全体での議論の高まりを受け、2019年6月には経産省が「新たなコンビニのあり方検討会」を立ち上げ、加盟店オーナーへの聞き取り調査などを実施。公取委も24時間営業を強制すれば独占禁止法違反になりうるとの見解を示した。
世論の批判や国の動きに焦ったコンビニ本部は態度を軟化させた。経産省の検討会では、コンビニ大手各社の社長が改善を表明。セブンは2019年10月に時短営業についてのガイドラインを公表し、「以前はできなかった時短営業が、体調など正当な理由があれば認められるようになった」(首都圏のセブンオーナー)。