貨物船不足で解体前の老朽船賃料まで高騰 世界的インフレ助長も
コンテナ輸送量は昨年も4.5%増加。これは主に老朽船を解体せず使用し続けたためだったが、用船料押し下げには至らなかった。
ロイターが過去半年で締結された定期用船契約30件を調べたところ、船主側は数十年に1度の強気市場を背景に期間を長く、しかも用船料を極めて高水準に設定していることが分かった。
海上運賃情報プラットフォーム企業ゼネタの指数に基づくと、5月のコンテナ輸送コストの上昇率は30.1%と、長期輸送運賃の月間ベースで過去最高になった。
世界の物価を押し上げ
専門家に話を聞くと、海上輸送コストの高騰は既に中古車からダイニングテーブル、自転車まであらゆるモノの値上がりをもたらしており、今後も消費者に痛みを与えそうだ。
国際通貨基金(IMF)は、昨年のコンテナ輸送コスト上昇は世界の物価を1.5%ポイント押し上げ、米国の物価上昇率に占めるウエートはおよそ25%だったと見積もっている。
IMFのアジア太平洋部門シニアエコノミスト、ヤン・キャリエールスワロー氏は「海上輸送コストが物価動向に及ぼす影響は大きく幅広い。世界中の国に波及しつつある」と指摘。ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料や原油の値上がりを消費者が実感するのは2カ月以内だが、海上輸送コスト上昇の影響が全面的に感じられるようになるのは最長で1年もかかると付け加えた。
さらに中国では新型コロナウイルス感染症の再拡大で港湾施設がまだうまく機能しておらず、造船会社は過去最高の新造貨物船を発注されているものの、大半は来年か2024年以降まで就役しない。
国連貿易開発会議(UNCTAD)の物流問題責任者ヤン・ホフマン氏は「高止まりしている海上輸送料は来年のかなりの時期まで消費者物価に上昇圧力を加え続けるだろう。輸送料はまだこの先何年も、コロナ禍前より高い状態になるのではないか」と述べた。