貨物船不足で解体前の老朽船賃料まで高騰 世界的インフレ助長も
2人の船舶ブローカーが提供したデータによると、現在カリフォルニア州と中国の間を航行している貨物船「ナビオス・スプリング」は1月に3年の定期用船契約が結ばれ、用船料は1日当たり6万ドルと2年前の同8250ドルのおよそ7倍になっている。
船籍がマーシャル諸島の本船は07年の建造で、最初の船主の取得価格は4200万ドル。一方、今の3年契約で得られる収入は6570万ドルだ。
海運業界は大もうけ
海運業界は今年第1・四半期の利益が593億ドルと、前年同期の191億ドルを大きく上回った、と専門家のジョン・マッカウン氏は話す。同氏はロイターに「海運会社は勝ち組で、彼らの大幅な増益はコンテナで運んだ全ての商品の価格上昇によって生み出されている」と説明した。
世界第2位の海運会社マースクは第1・四半期が過去最高益となり、売上高も55%増えて193億ドルに達した。今年の利払い・税・償却前の利益見通しは300億ドルに上方修正されている。
専門家によると、大手海運会社の一部がこうした利益をつぎ込んでいるため貨物船の価格が高値で推移し続け、運賃高騰と将来のインフレを助長することになるという。
いつ潮目が変わるか
クラークソンズのデータを見ると、昨年売却された中古コンテナ船は過去最高の503隻で、世界の総数の7%相当だった。今年1-5月でも108隻が売却された。
世界の海運最大手メディタラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)は20年8月以降で200隻の中古コンテナ船を購入している。
クラークソンズは、今年解体されているコンテナ船はゼロのため、17年の時点で11年だった世界のコンテナ船の平均船齢は13.9年に延びたと明らかにした。
それでも、主要企業が発注した巨大新造船の多くが就役する来年ないし2年後には、貨物船需給ひっ迫局面は終わりを迎える可能性がある。
世界海運協議会(WSC)のデータでは、昨年発注されたコンテナ船は計555隻、総額425億ドルと過去最高を更新。今年これまでにも208隻、総額184億ドルの注文が出ている。
これら新造船の幾つかは過去最大クラスで、全長は400メートルと昨年スエズ運河で座礁事故を起こした「エバー・ギブン」に匹敵する。マースクはロイターに、昨年同社が発注した12隻は、この記事の冒頭で紹介した「シナジー・オークランド」の4倍近い大きさだと説明した。
ゼネタのチーフアナリスト、ピーター・サンド氏は、港湾施設やサプライチェーンがパンデミック以前のように機能すれば、次々に就役する新造船が海上運送コストを押し下げてもおかしくないとの見方を示した。