なぜファッションが「貧困問題」を解決できるのか? 白木夏子氏インタビュー
1つめは2011年の東日本大震災のとき。震災復興のために寄付だけでなく、東北での消費やビジネスを応援しようという取り組みがメディアで紹介されました。そこで「エシカル消費」「エシカル商品フェア」といった言葉が広がっていきました。
2つめのターニングポイントは、バングラデシュの縫製工場ラナ・プラザが崩壊した2013年。犠牲になったのは、そこで働いていた1130名、負傷者は2500名以上にものぼりました。劣悪な環境のもとで先進国に向けてのファストファッションを生産していたことが世界に大きな衝撃を与えたのです。このラナ・プラザ崩落事故を機に、製造責任を考えようという動きが芽生え、ファッション業界の人たちがファストファッションへのアンチテーゼとしてのものづくりの道を模索するようになりました。
そして3つめのターニングポイントは、2015年9月の国連サミットでSDGsが採択されたことです。そこから日本の大企業や教育機関でもSDGsを実践に移そうという動きが加速していった。エシカルなものづくりやサスティナビリティに配慮した会社の設立が、一般の方々に広まったのがここ数年ですね。
HASUNA創業時にはエシカルという概念が広がっていくと信じて、啓発活動をコツコツ続けてきました。そのなかで共感してくれる方や、同じように活動する仲間たちがどんどん増えていった。創業時に描いていた未来が現実になってきて、10年あればある程度のことが実現していくのだと改めて思いました。
ミレニアル世代が消費の中心に。企業の存続に欠かせない発想とは?
2030年には、世界の労働人口の75%がミレニアル世代になると予測されています。デロイト・トーマツの「ミレニアル世代の意識調査」によると、ミレニアル世代はその企業が社会や地域にいかに貢献しているかに重きをおいて購買活動をする傾向にあるそうです。
この世代が消費の中心になるということは、エシカルやサスティナビリティの概念を製品やサービスに組み込まないと売れなくなり、企業生命が危ぶまれるということと解釈できます。企業として存続していくためには、ミレニアル世代やZ世代が共感するものをつくることが欠かせない。社会に配慮したものづくりが重視される現状は、これからエシカル・ビジネスを始めたい方にとって追い風といえるでしょう。