最新記事

エネルギー

中国の独立系製油所、安いロシア産原油購入か コロナ規制明けの需要増で

2022年6月17日(金)11時24分
山東省の工場に設置された石油タンク

中国の石油業界で「ティーポット」と呼ばれる、国営石油会社に属さない独立系製油所は一時稼働が落ち込んでいたが、息を吹き返しそうだ。写真は山東省の工場に設置された石油タンク。2018年7月撮影(2022年 ロイター/Jason Lee)

中国の石油業界で「ティーポット」と呼ばれる、国営石油会社に属さない独立系製油所は一時稼働が落ち込んでいたが、息を吹き返しそうだ。新型コロナウイルス対応の行動規制の緩和による国内の燃料需要回復や、価格の安いロシア産原油の供給増による精製事業の利幅改善が追い風になるというのが、トレーダーやアナリストの見立てだ。

石油供給がひっ迫するタイミングで世界最大の原油輸入国である中国の需要が増加することは、西アフリカやブラジルからの輸送先が変更になったり、欧米の制裁にもかかわらずロシアの利益が増えるなど、広範囲に影響を広げそうだ。

ティーポット製油所は供給業者との長期契約に必要な信用度が低いいため、原油の調達をスポット市場に頼っており、目先の精製マージンの動きに敏感だ。

こうした事情からティーポット製油所は中国の精製部門の中でも不安定な動きをしつつ、原油輸入に占める比率が20%以上もあるため、国内市場の変動に拍車を掛ける可能性がある。

調査会社・クプラーのデータによると、1─5月のティーポット製油所の原油購入量は前年同期比で31%余り減った。新型コロナ対応の行動制限で、国内の燃料使用が抑えられたためだ。

アナリストによると、景気刺激策や旅行制限の緩和を受けてティーポット製油所は生産体制の転換を計画。制裁で需要が落ち込み、指標原油に比べて大幅に割安となっているロシア産原油に飛び付いているという。

シンガポールの石油トレーダーは「ティーポット製油所は利益だけを考えるので、安いロシア産原油を最大限買い入れるのは間違いない」と話した。

別のトレーダーによると、ロシア産のESPO原油やウラル原油は中東産のオマーン原油に比べて1バレル当たり10ドルほども安く、ティーポット製油所はコストが下がり、利益率が上がっている。

山東省に拠点置くティーポット

個々の製油所に関するデータはほとんど公開されていないが、ティーポット製油所の多くは山東省に拠点を置いており、同省の輸入がティーポット製油所全体の需要を把握するのに使われることが多い。

クプラーのデータによると、政府がティーポット製油所による原油の直接輸入を認めた2015年、山東省が中国の原油輸入全体に占める割合は11.6%だった。2016年以降の平均は27%だ。

中国全体の原油輸入が1─5月に9.3%減少したのに対して、山東省は31%減と落ち込みが大きかった。このことは新型コロナ対応の制限が導入された時にティーポット製油所が大規模な国営精製業者と比べ、輸入を減らすスピードが速かったことを示しており、その分だけ輸入が回復する余地も大きいことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中